2021年09月15日 配信

既にワクチン2回接種を完了しているという岸さん

9/15(水)船橋商工会議所青年部が特別講演会「一緒に探そう!!向こう側にある新しい形」

内閣官房参与の岸博幸さんを講師に招き

 船橋市内の個人商店から中小企業までの地元企業が所属する経済団体「船橋商工会議所」主催の特別講演会「一緒に探そう!!向こう側にある新しい形」が9月15日、船橋市民文化ホール(船橋市本町2-2-5)で参加者300人以上を集めて行われた。

 主催は、船橋商工会議所の中で50歳までの経営者が参加している青年部の事業ユニット「ビジネス交流委員会」。同委員長を務める大矢倫子さんは「この時期だからこそ、私たちの団体だからこそ。会場でリアルな講演会をを実施する必要がある。講師も『直に会って話をする方が熱が伝わる』と賛同してくれ今回の講演会が実現した」と、熱く語る。

 会場は、スーパーアルカリイオン水を使った噴霧で空間洗浄、除菌を実施。来場者は検温と手指の消毒、マスクの着用を義務付け。入場券で体調に関するアンケートを回答させる方式を採り、席は前後で互い違いになるように1つずつ間をあけて着席させる。また、会場案内にあたるスタッフは、全員マスク着用の上フェイスシールド着用、手袋着用という考えうる限りの感染症対策で臨んだ。

 特別講演会講師を担当したのは、小泉政権下で経済財政政策担当大臣、金融大臣、総務大臣などの補佐官・政務秘書官を歴任、不良債権処理や郵政民営化などの構造改革推進に寄与。2021年から菅政権で内閣官房参与に就任した岸博幸さん。

 会場には、松戸徹市長も登場。冒頭で船橋市内の感染症に対する現状を話し、議会で採択されたばかりだという年末実施予定の10億円規模の経済政策「ポイント事業」についても触れた。

菅総理の実績、日本の経済成長率

 岸さんの講演では、冒頭で現在予定されている自民党総裁選挙についての話題を振るとともに、1年程度の在任期間に行った菅総理の「不妊治療の健保化」「最低賃金引上げによる格差是正」「福島県東京電力福島第一原発保管の汚染水浄化処理後の海洋放出の方針決定」「携帯電話料金値下げ」「デジタル庁創設」などの実績について紹介。一番大きな実績として、「コロナワクチンのスピード接種体制」を早期に整えたことを挙げた。

 また、コロナが明けることで期待されている「アフターコロナ」の経済成長に対し政治家や財界人に警鐘を鳴らし、2019年までの日本はデフレ経済で不景気だったことをあげ、1994年~2019年までの25年間、経済成長指標とされる「名目GDP」で日本が3%だったのに対し、米国経済は300%、中国経済においては2500%超だったと紹介。

 「世界の覇権を狙うアメリカと中国は仕方がない。『ヨーロッパと比較したらどうか』と言われることが多い」として、フランスの名目GDPが同期間に成長率2倍(200%)、イギリスでは2.2倍(220%)というデータを添え「日本は25年間負け組だった」と伝える。

 こうしたデータに対して言い訳としてあがる「デフレ経済が続いたから」に対しては、「金融経済の問題なので実質経済には関係がない」と回答。また、「人口減の高齢化社会だから仕方がない」についても「そもそもの経済生産性が低い事が問題」と一蹴する。

原因はこの国のトップ、リスクをとらない舵取り

 その原因として、政治家や大企業のトップたちに代表されるこの国のリーダーが脆弱だと指摘。「デジタル化を置き去りにしたことでイノベーションを起こせない国になった。原因はリスクある決断をしてこなかったこと」と明かす。

 また、「イノベーションとは全く新しい価値を生み出すことではなく、現在ある価値と価値を新しい組み合わせを創り出すこと」と100年前の経済学者シュンペーターの理論を例に挙げ、現場の大切さについて熱く語る。「日本はリーダーや指揮官が良いからここまで成長してきたのではなく、最前線にいる非エリート(現場の人)の力が強いから経済大国までのし上がってきた」と言葉に力を込める。

 その証拠として、医療の最前線で働く人たちの水際の頑張りや、コロナ禍における政府からの「自粛要請」だけで、感染拡大を世界のどの大国よりも抑え込んでいることなどを挙げた。

コロナをチャンスに、新しい価値観や意識にシフト

 コロナは価値観や意識を変えるためのきっかけとして、「人が今までにない新しい体験をしたことで新しいサービスが生まれるチャンス」と考え方やものの見方について示唆。

 在宅勤務、遠隔勤務で自宅の住環境、地域環境に目を向けるようになったこと、価値観の多様化などは「新しいビジネスが生まれるきっかけになる」という。

 「船橋市は東京からこれだけ近い立地。例えば『日本一住みやすい町を作る』などのテーマでもっと変われるはず。今こそリスクをとって改革してほしい。中途半端な改革ではなく、最後までやり切ってほしい。コロナが来たことで昭和的なやり方を見直すタイミングが来た。世代交代して若い人が意思決定できる社会を経験豊富な年長者がサポートする仕組みが望まれている」と、講演を結んだ。

 1時間半を予定していた岸さんの講演終盤では事前に集めていたアンケートに対する質疑応答も実施。「自民党総裁選に関する岸さんの私見」や「アフターコロナで伸びる業界について」「ネガティブ報道の多いマスコミに対してポジティブな報道の必要性」「なぜ、日本の政治が嫌われがちなのか」などの質問が紹介され、岸さんんは一つ一つに対して真摯に回答していった。

 「コロナに負けない生活様式はどんなものがあるか」という質問に対しては、「これからコロナのリスクは下がるだろう。私自身は過去一年間、生活をあまり変えていない。もともと他人との距離を取り、マスクにうがい、手洗いを徹底している。それだけでこの1年半コロナに感染したことはない。メディアの情報に踊らされず、自分で情報を取ることが大切」と話す。

 また、「Wワークの時代が来るのか」という質問に対しては、明確に「当たり前にきます。むしろ副業やWワークは積極的にやった方が良い。それによって、収入が増えるだけでなく各職場でもイノベーションのきっかけになる」と回答した。

 コロナ禍の緊急事態宣言でこの日の船橋市民文化ホールの完全撤収は20時。講演終了後、参加者らは事前に決められた方法で撤収を迫られ、20時には会場が空になった。

※この記事に記載の情報は取材日時点での情報となります。
変更になっている場合もございますので、おでかけの際には公式サイトで最新情報をご確認ください

  • 商工会議所青年部の下川会長

  • 市のコロナ対策についてふれる松戸徹市長

  • コロナ禍だからこそのリアル開催を実行した大矢倫子委員長

  • 「船橋から要望があればいつでも協力する」と岸さん

この記事を書いた人

山﨑健太朗

山﨑健太朗

船橋のタウン誌MyFuna、ネットニュースMyFunaねっと、船橋経済新聞を立上げ、現在は千葉県内全域のローカルニュース編集者と連携する「ちばごと」編集部を立ち上げています。主婦と高齢者をライターに育成し地域から日本を元気にする仕組み作りを目指しています。
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