2021年08月17日 配信

船芳園の加納芳光さん(写真右)と、vine&shrubオーナーのリツコさん

8/17(火)異常気象で「船橋のなし」豊水出荷がピンチに

聞きつけた市民らがSNSで連携・加工品商品化へ

 船橋市の特産品として全国的にも知名度の高い「船橋のなし」が今夏、「蜜症(みつしょう)」という梨特有の症例で出荷に大きな影響を受けていると聞きつけた市民らが、SNSで連絡を取り合いオリジナルの梨メニュー商品化に動いている。

 「蜜症」はリンゴやナシなどの果実に現れる生理障がいの一つで、梨の中では特に「豊水」に発症しやすい。蜜が集まる事で実が透明かかった色になり、梨特有のシャリシャリとした食感が乏しくなる。しかし、症状が出ていても人体に害はなく、梨自体は問題なく食べることはできる。

 収穫後すぐに食べるのであれば熟度が増している分「糖度」が高いなどの特徴があることから、ここ数年加工品への転換が模索されている。「蜜症」は、収穫から数日経つと透明かかっている部分が広がり、次第に茶色味を帯びてくる。その為、ギフト需要には向かず常連客用に安く販売するか、廃棄処分になる事が多かった。

 出荷できない梨について市内で梨の選果場を運営するJAいちかわでは、加工用として買い取り、梨ジュースやゼリーの原料としたり、梨味の缶チューハイの梨汁に使うなど廃棄ゼロに向けた動きをとってきた。

 船橋市内の梨農家の多くが選果場への出荷とは別に自宅前に開設している直売所で販売する形式。その為、「蜜症」や「傷なし」についての処分や加工については「自前でどうにかするしかない。今年は多く捨てることになるかも知れない」(加納梨園・加納昌弘さん)と危機感を募らせていた。

 「豊水の蜜症は開花から90日〜100日の気温・降水量に影響され、温暖化で開花が早まる事によってこの時期が梅雨にあたってしまう為にリスクが高まってしまうんです」と、船芳園の加納芳光さん

 そうした話を聞きつけた市民らがSNSで情報を交換し、飲食店店主や菓子作り好きな主婦らで「蜜症のなし豊水レスキューチーム」を結成。100キロを超える「蜜症」の梨を購入し各自で商品化、各店で販売の動きを見せている。

高根公団の商店会で梨メニュー

 各自で梨農園に連絡を取り、蜜症の梨購入する流れ。今月15日には最初のメンバーで市内にカフェ「vine&shrub」(船橋市高根台3-3-4、TEL050-5534-9088)を営むリツコさんが購入。その日の内に加工し、16日には商品化した。

 同店では16日、「蜜症」の梨についての説明をするとともに商品化した「梨ケーキ」(300円)「梨マフィン」(150円)「梨スムージー」(400円)を来店客に提供。「おいしいー」「梨のシャリシャリした食感が感じられる」など好評を得た。

 「梨ケーキ」は、ふわふわのスポンジケーキに生の梨をのせ焼き、シナモン風味の粉糖をかけて提供する。「梨マフィン」は、同店看板料理のマフィンに生梨を入れ焼き上げたもの。温かいうちに食べると梨本来の甘さが引き立ちカスタードクリームのような甘みを感じさせる。

 「梨スムージー」は、梨果肉と豆乳をミキサーで混ぜたものに、梨のコンポートとダイス状に細かくカットした梨を加えて提供。シャリシャリした梨らしい食感をダイス状の果肉で感じられるよう工夫している。

 「梨の瑞々しさ、梨らしい食感をどの様に表現したらいいか楽しみながらレシピを作っている。海外生活が長かったので地元の商品をPRする取組みに参加できてうれしい」と、同店のリツコさん。

 同店の営業時間は、9時半~17時。土日定休。

※この記事に記載の情報は取材日時点での情報となります。
変更になっている場合もございますので、おでかけの際には公式サイトで最新情報をご確認ください

  • この日、廃棄処分になる予定だった蜜症の豊水

  • 梨ケーキ(300円)、梨マフィン(150円)、梨スムージー(400円)

  • 高根台団地商店会内の「vine&shrub」

この記事を書いた人

山﨑健太朗

山﨑健太朗

船橋のタウン誌MyFuna、ネットニュースMyFunaねっと、船橋経済新聞を立上げ、現在は千葉県内全域のローカルニュース編集者と連携する「ちばごと」編集部を立ち上げています。主婦と高齢者をライターに育成し地域から日本を元気にする仕組み作りを目指しています。
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