2021年07月18日 配信

7/18(日)板倉病院で市民公開講座「在宅における看取りについて」

在宅看取り現場を多数見てきた訪問医がリアルを語る

 コロナ禍で面会制限などがある昨今、注目を集めている終末期における在宅ケア(ターミナルケアとも)について公益社団法人船橋地域福祉介護医療推進機構が板倉病院(船橋市本町2-10-1)6階のカンファレンスホールを会場に7月17日、市民公開講座「在宅における看取りについて」を開催。会場参加とオンライン参加合わせて市民や市役所職員など30人ほどが参加した。

 同団体は、船橋市中心に医療と福祉・介護のワンストップサービスを目指し医師・病院経営者、ケアマネージャーや福祉施設経営者ら福祉関係者、歯科医師、薬剤師に加え市民の代表などで組織され10年ほど前から活動を開始。

 船橋市などから委託を受けて年間を通じて市民公開講座を開催。医療・介護知識の普及や有事における病院前トリアージ(大規模事故や災害時に負傷者を仕分け、治療の優先順位を判断していく方法)普及などを行ってきた。今回の市民公開講座では、訪問診療の経験が豊富な久野慎一医師を講師に迎え「緩和医療」と「病院治療」の特徴から説明。

 緩和ケアでは、「家族との時間を大切にし、自然な日常の中で生活を送る事」に重きを置くのに対し、「病院治療」では、病状の把握がしやすく病状変化に対応しやすい事、家族の負担が軽減できることなどを挙げて対比、それぞれの長所短所が補完関係にある事を紹介した。「緩和ケア」は身体的・精神的な苦痛を和らげることを目的としているのだという。

 冒頭で久野さんは、緩和ケアは「看取り」ありきではなく「支える医療」である点、あくまでも「家族との時間を楽しく過ごすための方法」であることを強調。

 必要な時にいつでも医師に相談でき、また必要な時にはいつでもベッドが確保されており、介護に主要従事する家族(以降、キーパーソン)が手に負えないと判断した時点で「ギブアップ」しても良いという点を呼びかけた。

 久野さんは緩和ケアについて正しい知識を本人や子どもが持っていない事でキーパーソンが疲弊し、患者と共倒れする事を懸念している。そのため退院にあたっては「退院前カンファレンス」で緩和ケアについての理解を深める為の情報共有を図っているという。

 また、「病院での看取り」と「家庭での看取り」と称して、最後の瞬間まで面談する事が叶わず悲しみに暮れるイメージ(病院での看取り)、家族が故人の旅立ちを見送ったどこか暖かさのあるイメージ(家庭での看取り)をイラストで紹介。「病院の看取りは面会制限などもあって突然亡くなってしまった印象を持たれることが多い」と話す。

 さらに、介護対象者が最後の瞬間に向かっていく様子を共有する「死前教育」についてもふれ、「身を引く」「最後の踏ん張り」「下顎呼吸」という3つの段階を説明。「下顎呼吸」の段階になると余命は1日~2日、患者は既に苦痛を感じなくなっている事などにもふれた。

最後に在宅看取りを実施する条件として、
(1)本人と主介護者キーパーソンが看取りを希望している事
(2)過度な医療措置や延命措置を希望しない事
(3)基本的に常時介護力を保持できる事
 上記ほかに主介護パーソンもしくは家族がある程度の理解度を持っている事、看取りを迎えるのにふさわしい環境である事、経済的に可能である事などを挙げた。

また、必要な医療体制の条件として
(1)24時間365日対応可能な訪問医、訪問看護などを確保できる事
(2)かかりつけ医、訪問看護師の緩和ケア知識や実績がある事。また、ギブアップ時のバックベッド(上位入院受け入れ可能な空きベッド)確保。
(3)在宅看取りを理解し、経験があるケアマネや介護資源を確保できる事
 などを挙げ講演を終了した。

 講演後は、シンポジウムとして講師の久野さんに加えケアマネージャーの水川さん、薬剤師の伊藤さんも登壇。「在宅での緩和ケアの難しい点」「なぜ、キーパーソンを第一に考えるのか」「在宅医療連携の難しさについて」「在宅看取りのその後の家族はどうなるのか」「訪問診療を始めるタイミング」「訪問診療を行ている病院は市内にどのくらいあるのか」などの質問にそれぞれの立場で答えた。

Q1、「在宅での緩和ケアの難しい点」
水川:病院→在宅の場合はそれほど問題ないが、自宅→在宅療養の場合は準備などスピードが重要。
伊藤:薬の飲み忘れ等心配がある。コミュニケーションで不安を取り除くようにしている
久野:薬の量を半分程度まで減らす。本当に必要な薬以外は飲むのをやめてしまう。

Q2、「なぜ、キーパーソンを第一に考えるのか」
伊藤:身近な人の支えが必要。薬など本人だけで飲めないパターンも。
水川:本人の意志も大切だが、連絡や介護のサポートなど周囲があってこそ。

Q3、「在宅医療連携の難しさについて」
伊藤:病院なら勤務場所同じなのですぐに連携できるが訪問は職場が違うので訪問時のタイミングを合わせるようにしている。
水川:訪問診療のタイミング特に看護師のタイミングに合わせて訪問しコミュニケーションをとっている。
久野:連携しやすい人そうでない人がいる。「この地域ならこの人」と性格まで把握しているメンバーとチームを組み連携する。

Q4、「在宅看取りのその後の家族はどうなるのか」
久野:看取りの後はやる事がなくなり喪失感に。4分の1くらいは鬱(うつ)になる方も。趣味がある人は立ち直りも早い。女性の方が立ち直りが早い傾向にある。
水川:本当に心配なパターンでは、介護保険対応ではなく個人的に訪問したことも。周囲が気にかけることが必要。

Q5、「訪問診療を始めるタイミング」
久野:在宅医療を受けるには介護保険が必要なことが多い。「要支援」ではなく「要介護1」以上の介護認定が必要。

Q6、「訪問診療を行ている病院は市内にどのくらいあるのか」
水川:船橋市内は全体的に訪問診療行っている医師がいる
久野:かなり増えてきたので充実はしている。在宅の場合バックベッドの確保が重要。市内には、現在2つの強化型支援病院がありかかりつけ医(訪問医)と連携して常時受け入れ可能な体制を整えている。また、地域によって医療の充実度が違うことなども付け加えた。

公益社団法人船橋地域福祉介護医療推進機構HP
公益社団法人船橋地域福祉・介護・医療推進機構 | 福祉・介護・医療の連携サービスの提供 (suishinkikou.com)

厚生労働省 政策レポート がん対策について
厚生労働省:政策レポート(がん対策について) (mhlw.go.jp)

 

※この記事に記載の情報は取材日時点での情報となります。
変更になっている場合もございますので、おでかけの際には公式サイトで最新情報をご確認ください

  • 病院治療と在宅ケアそれぞれのメリットデメリットが補完関係に

  • 在宅緩和ケアは必ずしも「看取り」ではないと説明

  • 病院での看取りと在宅看取りのイメージイラスト

  • 左から座長で医師の土居良康さん、久野慎一さん、水川さん、伊藤さん

この記事を書いた人

山﨑健太朗

山﨑健太朗

船橋のタウン誌MyFuna、ネットニュースMyFunaねっと、船橋経済新聞を立上げ、現在は千葉県内全域のローカルニュース編集者と連携する「ちばごと」編集部を立ち上げています。主婦と高齢者をライターに育成し地域から日本を元気にする仕組み作りを目指しています。
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