2021年06月23日 配信

ふるいにかけ小さなアサリは海へ戻す

6/23(水)東京湾初、「砕石覆砂事業」によるアサリの自然繁殖に成功

船橋市漁業協同組合がアサリ漁を公開

 船橋市漁業協同組合(船橋市湊町1-24-6)は、壊滅に瀕していた船橋のアサリが「砕石覆砂事業」により自然繁殖に成功したため、6月22日、報道関係者に向けてアサリ漁を公開した。

 「砕石覆砂事業」とは、細かい砂利を海に撒いて海底を覆いアサリの繁殖を補助する事業。船橋三番瀬のアサリ漁は1950年代後半から1975(昭和50)年には漁獲高が年間1万トンを超えることが多かったという。

 かつてアサリは船橋の特産物として知られ、「ふなばし三番瀬海浜公園」(潮見町40)のマスコットキャラクター「アサリくん」も市民に親しまれていたが、青潮の影響で次第に漁獲高は減少。2006(平成18)年以降は激減し、ここ10年間の漁獲高はゼロに等しかった。

 千葉県水産総合研究センター東京湾漁業研究所(富津市小久保)の元所長で、40年にわたり、東京湾の漁業とアサリの研究を続けている柿野純さんは、「アサリの漁獲高の激減の原因の一つには、海苔漁の激減が影響している。アサリは波に流されやすく、海苔養殖の支柱柵が、波で稚貝が流されるのを防いでいた。しかし今は、海苔の養殖も1989(平成元)年の5分の1となってしまった」と話す。

 さらに「もう一つは2011(平成23)年の東日本大震災で三番瀬にも津波が発生し、海底の40~50センチの砂が流され、水深が深くなったことで波が大きくなり、アサリも流されてしまった」と話した。

 アサリの繁殖を促すため、2017(平成29)年から2020(令和2年)年まで千葉県、船橋市と漁業協同組合、専門家らで組織する「船橋市漁協活動グループ」が水産庁「水産多面的機能発揮対策事業」(国・県・市が一体となり漁業者などの活動を支援)からの交付金を利用し、三番瀬の漁場4カ所に砕石覆砂区の造成を試験的に行った。その交付金額は4年間で約5,000万円となる。

 「小さいアサリが留まりやすいように2~5ミリの砕石で海底を覆います。4年間で7,400平方メートル、厚さは5~10センチになります。今年になって、アサリが成貝(3~4センチ)に育った。長期的にみて結果が出れば」と船橋市役所の経済部農水産課の梅田新也さん。

 この日、貝漁師・小野尾祐司さんが砕石覆砂地区でアサリ漁を披露した。鋤簾(じょれん)で引き上げると東京湾のアサリ特有の白黒模様の「パンダアサリ」や青みがかった「三番瀬ブルー」と呼ばれるアサリが採れた。小野尾さんは「砕石をもっと広い範囲で撒いてもらいたい」と同事業に期待している。

 「砕石覆砂は伊勢湾、有明海などで行われているが、かつては壊滅的だった天然のアサリが成貝まで成長したのは東京湾ではふなばし三番瀬が初めて。現在アサリは砕石覆砂を施した場所にしか生息していない。今後の漁場の改善や規模の拡大を検討している」と同事業の技術顧問を務める柿野さんは抱負を話した。

 「船橋市漁業協同組合」専務理事の鈴木正俊さんは「ホンビノス貝は外来種だが、伝統的な江戸前のアサリの復活は喜ばしいこと」と笑顔を見せる。

 アサリの採集は試験的に毎週土曜日に行われ、「三番瀬みなとや」(日の出1-22-1 船橋漁港内)で土・日曜日のみ10時~15時に1グラム1円で販売する。シケなど海の状況により入荷が無いこともある。「砂抜きのようにして砕石を吐かせてから食べて下さい」と梅田さん。

※この記事に記載の情報は取材日時点での情報となります。
変更になっている場合もございますので、おでかけの際には公式サイトで最新情報をご確認ください

  • 砕石を漁場に入れ海底を覆う作業(船橋市役所提供)

  • 鋤簾(じょれん)を使ったアサリ漁

  • 砕石覆砂地区で貝漁師の小野尾さん

  • 東京湾の漁業とアサリの専門家・柿野さん

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