2020年12月28日 配信

店主の本澤宏道さん・秀子さんご夫婦

12/28(月)丸山の駄菓子店「みどりや」大晦日に59年の歴史に幕

数々の思い出を胸に別れを惜しむ人々が集まる

 59年間、地域住民に親しまれてきた駄菓子店「みどりや」(船橋市丸山3-7-12)が12月31日に閉店することから、別れを惜しんで店を訪れる人が後を絶たない。

 「みどりや」は1961年に丸山に店を構えた。2代目店主の本澤宏道さん(76)は、高齢のため昨年で閉店する予定だったが、周りから「もう少し続けてほしい」と言われ、今年末まで営業を延長してきたという。

 同店の開店当時は日用雑貨の店で、当時高校生だった宏道さんも店を手伝っていた。最寄り駅である東武アーバンパークライン・馬込沢駅周辺には、当時は商店や家はほとんどなく、駅から徒歩10分ほどの商店街が一番にぎやかだったという。「当時は商店街の銭湯に通うお客さんや買い物客で、車が通れないほどの人でにぎわっていましたよ」と本澤さん。

 1979年、店主である父親が死去したために宏道さんが家業を継いだ。当時の商店街では、歩行者天国にして盛大に夏祭りが行われていた時期もあったが、馬込沢駅周辺に住宅やスーパーマーケットなどの店舗が増えていき、人の流れが変わっていった。

 「みどりや」は約15年前から駄菓子と文具の店に切り替え、空いたスペースにはテーブルと椅子を置き、買ったお菓子を食べられるようにもした。しかし同商店街では次第にシャッターを下ろす店が増え、今年は新型コロナウイルスの影響で、夏祭りなどの行事は次々に中止となった。

 近所でインド料理店を営むメネゼスさんは「本澤さんは子どもたちが大人になっても覚えていてくれて、人柄もあり多くの人に慕われている。コロナがなければ本澤さんのためにパーティーを開く話があったのですが…」と残念がる。

 本澤さんは「このところ大勢の人が会いに来てくれてうれしい。毎日文房具を買いに来てくれる母子もいて『この子が学校に行くようになったら、みどりやさんで買ったんだよと言って渡してあげたい』と言ってくれた人もいましたよ」と目を細める。

 「みどりや」では店内各所に本澤さんの手書きメッセージが貼られている。子どもたちに注意を促すものもあれば、長年の感謝の言葉を添えている文面も。本澤さんと妻の秀子さん(74)は、たとえ小さな子どもでもていねいな言葉で接する。本澤さんは「子どもたちが大きくなって結婚しても子どもを連れて来てくれたり、3代に渡ってお付き合いしている人もいます」と振り返る。

 店内のゲームで遊んだりお菓子を買ったりしていた男子中学生は「『みどりや』の閉店は悲しい…」とコメントし、「閉店を聞いて友達と久しぶりに来た。閉店はショックです」と男子大学生。週に1回は来るという女子小学生のグループは口をそろえて「『みどりや』はお菓子が安いし、明るくて来るのが楽しい。おじさんたちに今までありがとうございましたと伝えたい」と話した。

 50代男性は「4年前に丸山に引っ越してきた。ここは自分が子どもの頃に通った駄菓子屋と同じようで懐かしい。家族と来てお菓子を選んだりして楽しかった。スーパーにも駄菓子は売っているけど、ここはそれとは違うんですよ。ここは学校とは違う意味で教育の場でもあると思う。自分で計算をしたり、マナーを自然と学んだりできる」と同店の魅力を熱く話した。「家族が病気なので、今日は一人できました。おじさんは相談相手にもなってくれるんです」とも。

 市内旭町在住で、3世代連れだって訪れていた福住さん一家は「実家が近くで子どものころから通っていた。いつもおじさんがいてくれて安心だった。こういう店がなくなるのは寂しい」と、テーブルに座り、同店での最後の時間を家族と過ごしていた。

 「みどりや」に訪れる人々は口々に「最後までにまた来ます」と別れを惜しんでいる。本澤さんも「今までたくさんの子どもたちとのふれあいはかけがえのない宝物です」と静かに話した。

 営業は12月31日まで。29、30日は14時~17時の営業。31日は12時~15時となる。

※この記事に記載の情報は取材日時点での情報となります。
変更になっている場合もございますので、おでかけの際には公式サイトで最新情報をご確認ください

  • 自転車がずらりと並ぶ店の入り口

  • ゲームに興じる子どもたち

  • 「59年間ありがとうございました」のメッセージが

  • 店主の手書きメッセージ

この記事を書いた人

yumiko_mikami

yumiko_mikami

MyFuna編集長のミカミです。子育て中の主婦ですが、MyFunaを通し、自分が住む街を知ることの大切さに気づかせてもらっています。
船橋の魅力をどんどん発信していきます!
  • Facebook
  • Instagram
スポンサードリンク

記事の場所
関連キーワード