2020年08月26日 配信

「蜜症」の梨は、時間が経つと症状が出ている部分が黒ずんでくる。食べても害はない

8/26(水)市内梨農家で「『豊水』が買えない」現象

市内菓子製造業などとコラボして蜜症の梨の有効活用も

 市内の梨農家直売所で例年ならば8月20日ごろから8月末までは「豊水」最盛期となるが、直売所の閉店時間が早まったり、「豊水」の地方発送を受け付けていなかったりする農家が多い状況が8月26日現在、続いている。

 例年の風景と違う原因は「豊水」に多く見られる生理障害のひとつ「蜜(みつ)症」が出ているものが例年よりも多いという。

 市内農業関係者に話を聞くと、特定農家だけでなく、市内全域、県内全体においても販売できる「豊水」の数が全体的に減少傾向にあることがわかった。

 「蜜(みつ)症」はリンゴやナシなどの果実に現れる生理障害のひとつで、梨の中では特に「豊水」に発症しやすいという。症状が出ていても人体に害はなく、梨自体は食べられる梨となる。

 しかし果実を切ってみると果肉の一部が水浸状となり、切ってしばらく経つと黒ずんでくる。その見た目から、一般の人には販売できず廃棄する事が多い。大量の「豊水」を抱え「どこか受け入れてもらえる店などはないだろうか」と悩んでいる農家があることもわかった。

 市内の梨農家「船芳園」(船橋市二和東2-6-1 TEL 047-448-2158)の加納芳光さんによると「豊水の収穫ピーク時には、梨が約30キロが入るケースで1日5ケース分もの症状が出ている梨があった」という。「現在は1日に出てくる販売できない梨は約30キロ分」とも。

 県からも毎年「豊水」における密症発生割合の予測値が知らされるなど、各農家は普段から発生を極力抑えられるよう気を配りながら栽培しているが、昨今の異常気象の影響も大きいと見られている。

 関係者によると「蜜症は、7月の気候が低温が続いた場合や長雨によって発症しやすい。今年はまさにそれがあり、さらに梅雨が長かった。春には雪も降った。こうした気象の変化が大きく影響している」と話す。

 加納さんによると「今年の『豊水』は思っていた以上に密症の発生数が多い。1年間かけて育てた梨を廃棄しなくてはいけないことも辛いが、多くのお客様のご注文を断らなくてはいけないのが本当につらい」と話す。

 JAいちかわ船橋梨選果場運営委員会事務局スタッフは「まだ豊水の時期が終わってはいないので何とも言い難いですが、現時点で数を見ると、確かに今年は特に(症状が出ているものが)多い。東葛エリア全体的に今年の豊水は販売できる数が少ないです。市場関係者の方の話だと、野菜や果物全体的に数が減っているようです」と現状を話した。

 出荷できない梨については、「当選果場に納めている梨農家さんの場合、症状が出ている梨やキズがある梨など、通常の販売ができない梨については加工用として買い取ります。その後、梨ジュースやゼリーの原料となったり、イオン系列で販売されている梨味の缶チューハイの梨汁に使われたりしています」と話す。

 船芳園の加納さんは「個人でやっている農家の場合は、販売できない梨を自分でどうにかしなくてはいけない」と話す。同園では以前から親交の深いジェラート店や市内飲食店で梨を一次加工し、菓子原料やジャムなどに加工しやすい「コンフィチュール」にするため密症の梨を引き取ってもらい、商品として活用するなどの取り組みを行っているという。

 さらに「ほかにも多くの農家さんが廃棄しなくてはいけない梨の行き場に困っていると思う。もし協力いただける飲食店さんなどがいらして、知り合いの梨農家さんがいらしたら聞いてみていただきたい」と呼びかける。

 前出のジェラート専門店「アルトポンテ」(船橋市金堀町525 ふなばしアンデルセン公園内)代表の髙橋裕武さんは「蜜症の豊水は品質的に全く問題なく、むしろおいしく仕上がっている!と感じるくらいです」と蜜症の特徴を話した。

 加納さんは「この異常気象は今後も続くと思う。今後を見据え、当園では豊水に変わる品種を育て始めました。実がつくようになるにはまだまだかかりますが、先を考えると豊水の栽培はもう今の気候では難しいかもしれない。変化に対応していかなければ」と話す。

 続けて、「せっかく買いに来てくださったのにお断りしなくてはいけない現状は本当に心苦しいが、豊水の特性として、こうした症状が出ることがあるのをみなさんに知っていただきたい」とも加えた。

 豊水の収穫は今月いっぱいがピークとなるが、各園とも直売所開店と同時に販売できる分を店頭に並べ、それが売り切れたら販売終了となる。そのため午前中には店頭販売分が売り切れ、早々と店を閉めざるを得ない直売所もある。

※この記事に記載の情報は取材日時点での情報となります。
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yumiko_mikami

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MyFuna編集長のミカミです。子育て中の主婦ですが、MyFunaを通し、自分が住む街を知ることの大切さに気づかせてもらっています。
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