2020年05月19日 配信

5/19(火)太宰治ゆかりの玉川旅館が100周年目前で廃業

新型コロナ感染症自粛の影響で宴会需要激減も

 太宰治ゆかりの宿として広く知られ、船橋市内の経済界・公官庁の宴会などの宴会用途や合宿施設として幅広い層の市民に親しまれてきた玉川旅館(船橋市湊町2-6-25)を4月末で閉鎖したことを経営陣が発表した。

 同館は、大正10(1921)年創業で今年が100年目の節目だった。同館の施設は、本館・第一別館・第二別館の三つの建物が国の有形文化財として登録されている。本館は、昭和16(1941)年完成。木造2階建て瓦葺で建築面積65平方メートル。

 第一別館は昭和3年完成、昭和23年に増築。木造平屋建て、瓦葺で建築面積230平方メートル。第二別館は昭和8(1933)年完成。木造建築、瓦葺、建築面積362平方メートル。いずれも、平成20(2008)年4月18日付けで国の有形文化財に登録されている。 

 大正ロマンを感じさせる施設の内外景観、太宰が滞在したという桔梗の間には国内外から熱烈なファンが訪れるなど船橋市内における観光地としても有力な施設だった。

 しかし主力の宴会事業は、ここ数年需要減少がみられ経営状況を圧迫。また、近年拡大傾向にある自然災害などから木造家屋を維持管理するコストや細かいメンテナンスの手間などでも頭を悩ませていたのだという。

 「コロナのタイミングで3月の売り上げは半減、4月はほぼ売上ゼロの状態が続いた。時間をとって先の事を二人で相談した結果、廃業する事を決めた」と、記者を前に寂しそうに微笑む女将の長野與子さん。3月29日に入っていた宴会後、そのまま宿泊したのが同館最後の宿泊だったという。

 同館の営業は、4月末で終了。事業としてはこのタイミングで廃業とし、6月から順次施設の解体工事が始まり年内には解体が完了するという。解体後にどのように活用するかなど細かい点は未定だという。

 19年前、同館開業80周年の記念式典と先代の80歳記念誕生日会を大広間で開催した際、「あと20年は頑張って経営しよう」と弟で代表の小川了さんと話していたという長野さん。くしくもコロナによる影響で閉鎖の決断が早まったが「やり遂げた感覚と、残念な感覚両方があります。今はまだ建物が残っているので実感がない」と、今の気持ちを語った。

 「10年ほど前から風が変わり、台風の時などは2時間かけて全館の雨戸を閉めます。木造家屋は完全に雨戸が乾いてからでなければ戸袋に締まってはいけないと先代から伝えられています。おかげで建物には大きな損傷はないのですが、細かい補修などは毎日の事なのです」と木造家屋の維持管理に関する苦労もこぼした。

 安全面の考慮から建物内に立ち入ることはできないが、5月中は外観の撮影などにも応じる予定だという。

※この記事に記載の情報は取材日時点での情報となります。
変更になっている場合もございますので、おでかけの際には公式サイトで最新情報をご確認ください

  • 代表の小川了さん、女将の長野與子さん

  • 大正・昭和にタイムスリップさせてくれる館内

  • 太宰治が20日ほど滞在したという桔梗の間

この記事を書いた人

山﨑健太朗

山﨑健太朗

船橋のタウン誌MyFuna、ネットニュースMyFunaねっと、船橋経済新聞を立上げ、現在は千葉県内全域のローカルニュース編集者と連携する「ちばごと」編集部を立ち上げています。主婦と高齢者をライターに育成し地域から日本を元気にする仕組み作りを目指しています。
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