2018年12月03日 配信

平みきさん(左)と永田久美子さん

12/3(月)「第8回船橋市認知症シンポジウム」
本人が生き生きと暮らせるまちをつくろう

 「第8回船橋市認知症シンポジウム」が12月1日、船橋市勤労市民センター(船橋市本町4-19-6)で開催された。

 テーマは「本人が生き生きと暮らせるまちをつくろう」。第一部の基調講演では、認知症介護研究・研修東京センター研究部の部長永田久美子さんと、52歳時にレビー小体型認知症と診断を受けた平みきさん(59)が登壇。

 認知症は、原因になる病気によって70種類くらいに分けられるというが、中でもアルツハイマー型認知症、 レビー小体型認知症(DLB)、脳血管性認知症の3つを総称して「三大認知症」と呼ぶ。レビー小体型認知症は、レビー小体という神経細胞にできる特殊なたんぱく質の増加が原因。

 かつては、認知症になったことが分かった時、人はみな「絶望の悪循環」に陥ったという。できないことに囚われて暗くなり、家族も本人も消耗し、お互いが力を出せず、さらに後ろ向きになり、できないことが増えていくという悪循環だった。

 永田さんは、「現在は認知症をめぐる考え方や生き方の変革期にあります」と話す。家族も本人もできることを見つけながら、明るく楽しく生きていくことで、状態は安定し、みんなが前向きになり、できることも増えていくという「希望の良循環」が叶うといい、「問題点を重視し絶望していたこと」から、「可能性を重視し希望を見出すこと」へと新しい考え方や生き方に世の中がチェンジしているという。

 平さんは、自身が認知症になった当時は、幻視があり生活が乱れていった。そのような中、夫の「残った脳を使えばいいんだよ」という一言に救われたという。そして「本当のやさしさは手伝うことではなく、本人にさせることです。手伝うことのほうが実は簡単で、大切なことは当人の声に耳を傾け、一緒に何ができるかを考え、できることから一緒に動き出すことです」と断言する。

 平さんは自分なりの試行錯誤を重ね、認知症になっている立場だからこそわかる認知症の人の気持ちをユーモアを交えて話した。そして「自分の脳は自分で動かす」「『ない』を使わない」「偏見に巻き込まれず今日を楽しむ」「悩んでいる時間はもったいない」「工程が複雑なら単純にすればよい」など、可能性を見つけるために前向きに戦っている。医者に対しても、「認知症になったことがないのだから、わたしのほうが認知症のことをわかっているでしょう」と話すと、会場には笑いがあふれた。

 第二部はシンポジウムで、船橋薬剤師会の木澤尚子さんが司会進行を務め、永田さんと平さんに加え、認知症の人と家族の会千葉県支部の児島和子さん、船橋市認知症高齢者グループホーム連絡会の山岸大輔さん、船橋市訪問介護事業者連絡会の久保田恵子さん、船橋市中部地域包括支援センターの大谷明子さんがシンポジストとして登壇し、ディスカッションが行われた。

 最後に東葛南部認知症疾患医療センター千葉病院精神科の小松尚也さんから「今年8回目のシンポジウムになりますが、テーマに『認知症』というワードが入らないのは初めてで画期的なこと」と話があった。「認知症」があるなしに関わらず、いきいきと暮らせる船橋を作るため進んでいきましょうと総括があった。

 その後、主テーマを「認知症について」とする無料相談会がホール前で行われ、精神科の小松さんや、総合司会も務めた土居内科医院の土居良康さん、薬剤師の伊藤美奈子さん、ケアマネジャーの水川みちえさんが多くの人が相談に丁寧に応えた。

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この記事を書いた人

大西俊子

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