4/13(金)船橋のなし昨年より1週間ほど遅れて満開に
晴れ間を使った受粉作業で梨農家は大わらわ
全国的な梨の産地として知られている船橋市内の梨農家「船芳園」(千葉県船橋市二和東2-6-1 TEL047-448-2158)では、桜の満開時期に合わせてやってくる受粉作業を束の間の晴れ間で終わらせようとあわただしい日々を送っている。
「今年の開花は昨年と比較して1週間ほど遅かった」と話すのは、加納芳光さん。「それでも、幸水の出荷がお盆前後なのでこれが通常なんですけどね。昨年が早すぎた感じですよね」と、受粉作業をしながら答えてくれた。
船橋市内には100件近い梨農家がいるが、いずれもこの時期は晴れ間を見ての受粉作業に忙しい。「ここ数年、桜の花見なんて行っていないですね。夜も花から花粉を摂取するのに忙しいんですよ」と、夏季には多くの人でにぎわう直売所とは異なる梨農家の裏側を明かす。
梨の実は、「幸水」(7月終盤~お盆後まで)「豊水」(お盆前~8月末頃まで)「新高」(8月終わり頃~9月まで)の順に収穫することが出来る。しかし不思議なことに、開花するのは、「新高」「豊水」「幸水」の順で収穫とは逆になる。
例年、この時期に編集部では受粉の取材をしてきたが、その際には満開の梨畑の中で「幸水」の受粉作業の様子を撮影していた。この日の受粉作業の対象は「新高」。畑の中の梨の木は半分以上がつぼみの状態だ。やはり、例年よりも1週間程度開花が遅れているようだ。
「幸水の受粉には、新高や豊水の花粉を使います。この時期には、今年の花から幸水に受粉させる花粉を摂取する作業も夜間に並行して行います。逆に、新高の受粉には昨年摂取した幸水の花粉を冷凍保存していたものを使うんです」と芳光さん。船橋市内の梨農家は、その多くがこだわりの製造方法で高品質な梨を市場に流通させているが、「自家製の花粉」で受粉を行っているのはわずかになってしまったのだという。
最近は、中国産の梨から採った花粉で受粉させる農家も増えてきているという。「今年みたいに開花の時期に晴れ間が少ない時には保険の意味で冷凍保存の花粉を買えるというのは安心感がある。雨が降って作業できないと花粉を摂取できないこともあるんです」と、芳光さんの父一男さん。「でも、中国産の場合は保存状況などの問題もあって、結実するのが50パーセントくらいなんです」とも。
また、梨の栽培が盛んな千葉県北西部でも、白井市などではミツバチをはじめとした自然界の虫に受粉を任せる例も多いのだという。野山を自由に飛び交う虫たちが梨の花の間を飛び交い、時期が遅れて開花した新高の花粉をもって、他よりも早めに咲いた幸水の花への受粉を行うのだ。
しかし、船橋市のような都市型の農地では、農園全体を虫よけ網で覆ってしまうので人工授粉が主体となっている。受粉の際に、「摘花」という作業も行う。花芽の中でも結実した際に枝が邪魔になり成長を阻害することが予測されるものは摘み取ってしまう。また、1番目~2番目に花芽を形成したものではなく3番目~5番目程度に花芽形成したものを残すのだという。
こうして、手間をかけた受粉作業を行えるのも花が咲いている間の3日間程度、主要な3品種の受粉すべてを考えても正味10日程度しかないのだという。この束の間の晴れ間に梨農家ではアルバイトや地域のボランティアスタッフと一緒になって一心不乱に作業を行っていく。
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