2013年09月01日 配信

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高校生のサトルは、お気に入りの公園で野良猫を構って暇つぶしをしていた。

サトルの飼い猫、白猫のマリーもパトロールのついでに立ち寄りその様子を眺めていたが、

向かいのベンチに座る男の子の視線に気がつくと「ニャン」と鳴いてサトルに知らせた。

黒いランドセルを背中に背負ったままで、それがとても大きく見える。

サトルは男の子に近寄り、嫌がらなかったので横に腰を下ろした。

サトルが急に歩き出したことで猫たちは驚いて離れていき、

代わりに鳩が一羽、また一羽と物欲しそうに空から降り立ち近づいてくる。

「鳩は餌がもらえると思ってるね。」

サトルは男の子に話しかけてみた。

すると男の子はそれには答えずに

「僕、いつも徒競走でビリなんだ。今日はクラスで皆に馬鹿にされて、格好悪くてもう、本当に嫌になったんだ。」

そう、吐き出すように話し出す。

サトルはふうん、と頷く。

そこに、ケンケンの要領で近寄ってきた鳩がいた。

よく見ると二本あるはずの足が一本しかない。

サトルはその鳩を指差しながら言った。

「あの鳩は足が一本しかなくて他の鳩より歩くのが遅いけど、格好悪い?」

男の子は首を振りながら答えた。

「でも、鳩は空が飛べるよ。」

「そうだね、君も同じなんじゃない?

人間は空は飛べないけれど、両手も頭も使える。足が遅くたってどうってことない
よ。」

サトルが笑い、男の子も笑顔になった。

◇宮岡みすみ
昭和43年、船橋市出身

平成19年度船橋市文学賞 「そうして、歩いていく」にて小説部門佳作入賞

読み手の心に希望が残る話を中心に執筆

※この記事に記載の情報は取材日時点での情報となります。
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