2013年02月01日 配信

201302_pickup_3.jpg

白猫のマリーはいつものように、縄張りのパトロールに出かけていた。

すると、向こうから飼い主のサトルが手に浮き風船を持って現れた。よく見ると、近所に住む車椅子の女の子とそのお母さんと一緒だ。車椅子の子も風船を持っている。
「あ、ヒナタちゃん、風船いいなー。」

反対側からヒナタよりも小さい女の子が来た。

「今行ってきた電気店で、もらったんですよ。サトルくんともその時一緒になって。」と、ヒナタの母親が女の子の母に話している。

「ハナちゃん、欲しいの?いいよ、あげる。」ヒナタが女の子にはい、と風船を手渡した。

「あっ。」女の子は受け取り損ねて、それは空高く上がっていった。赤い色が青空の中に鮮やかに映える。そうして小さな点になり、やがて見えなくなった。女の子は今にも泣き出しそうだ。サトルは慌てて「大丈夫、これをあげるよ。」と、自分の風船を差し出し、女の子は今度はしっかりと受け取り、笑顔で「ありがとう。」と言った。「ばいばーい。」女の子は母親と立ち去っていく。

「風船は、私よりも自由に遠くに行けるみたい。」ヒナタが呟く。それを聞いてサトルが言った。「だけど風船はもらった人しか笑顔にできないけど、ヒナタちゃんの優しさは、その周りの人達まで笑顔にするよ。俺もその一人だよ。」
そして、ヒナタも笑顔になった。

◇宮岡みすみ
昭和43年、船橋市出身

平成19年度船橋市文学賞 「そうして、歩いていく」にて小説部門佳作入賞

読み手の心に希望が残る話を中心に執筆

※この記事に記載の情報は取材日時点での情報となります。
変更になっている場合もございますので、おでかけの際には公式サイトで最新情報をご確認ください

スポンサードリンク

MyFunaの最新情報はこちらから
関連キーワード