2011年09月01日 配信

精神科医療と福祉
広がる「生活のしづらさ」の支援

治療から福祉へ

今から40年くらい前、私が精神科医になった頃は精神科の医療と福祉という考えは、特に精神科医にとってはなじみが薄かったものです。なぜかというと、精神科の対象の病気はあくまで「病気」として考えられていたからです。だから、それは「治療」が優先するべきであり、「治るもの」という考えが、精神科医ばかりでなく、患者さん、家族の方々にも広く受け入れられていたのです。

しかし、その考えは徐々に変わってきました。特に、患者さんを抱える家族の方々が、「治るのを信じながらも、何年も何年も苦労を続けて、その間に失っていくことの多さに、これではいけない」と立ち上がったことで、多くの患者さんが抱えた「障がい」に焦点があてられるようになってきました。体の病気によって「障がい」=「長期にわたって日常的な生活能力が損なわれた状態」を抱えたことと同じことが、精神科の病気にも伴うものだという見方が社会的に認められてきたのです。

つまり、治ることを信じつつも(確かに治療で治る方もいます)、またそのための努力を払いながらも、今あるこの「障がい」に対しての支援を求めることが当然であるという考えが出て、初めて「精神の病気」を抱えた方々を「治療」だけでなく「福祉」の対象と考える時代になってきたのです。

精神の病気、その支援とは

「精神の病気」(特に統合失調症を中心に)の方々の「障がい」とは、端的にいえば、「生活のしづらさ」です。比較的周囲に認められやすい例えば幻覚とか妄想とかの症状はこの病の実はごく一部で、この病のもっとも深刻な症状は「生活の意欲がなくなり、感情がにぶり、人間的な刺激を避けたくなる」という事態であり、この内面的な「病気」によって、多くの「生活のしづらさ」すなわち「障がい」が出現し、しかもその部分は見えずらいため、他者には理解され難いものとして本人を苦しめているのです。

この「障がい」を抱えた方々は、実は社会の中でひっそりと暮らしています。市民の100人に一人がこの病を抱えている割に、それほど目立たないのは、実はこの病の中心がそのような特徴を持っているからです。だから、精神的な病気を抱えた方々への福祉支援はこの「生活のしづらさ」を支援するものとなります。たとえば、社会からの引きこもり生活から社会参加を促し、人としてのうれしさ、喜び、楽しさを体験していただく、仲間と仕事することで意欲を引きだし、人間としての誇りを取り戻す体験をし自信を持って生きていけるように支援する、等々が主な活動目標となります。

船橋市内での支援の取り組み

こうした考え方、見方がようやく精神科医療側にも広がってきて、20年くらい前から「精神科医療と福祉」という概念が定着してきました。船橋市においても、すでに家族会の方々の努力と実践があったのですが、昭和61年、船橋市精神保健福祉推進協議会が発足し、精神科病院関係者、医師会、保健所、船橋市福祉行政関係者、そして家族会の方々が力を合わせ、精神障がい者の福祉を進めようとしてきました。その後国の法律も次々に改正されながらも方向性は一貫しています。

いま、船橋市には「船橋市地域活動支援センター・オアシス」始め、すでにこのコラムでも紹介された多くの精神障がい者のための福祉活動が展開しています。さらに、精神だけでなく、知的、身体の障がいも同じ福祉支援の対象としての支援活動も増えてきています。

少し、話が難しかったかもしれませんが、このコラムを借りて、「精神科医療と福祉」ということについて、基本的なことをお話し、船橋市民の方の理解と支援をお願いいたしました。なお、具体的な活動は、前記協議会発行の「市民のためのこころの健康」小冊子をご覧下さい。

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千葉病院

院長・鈴木洋文先生

【医療法人同和会 千葉病院】
船橋市飯山満町2-508 ☎047-466-2176

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