2011年02月01日 配信

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施設長/鶴田一洋さん

どんな障がいがあろうとも
楽しい人生を歩んでほしい

現在、障がいがある我が子達も特別支援学校高等部に進学することができ18歳までの日中活動の場所は保証されています。しかし、その後の生涯を終えるまでのこれまでより数倍長い期間をどのように過ごすのかということがとても大きな問題です。一部の方は就職することができますが、残りのほとんどが福祉施設を利用するかもしくは在宅という進路しかありません。また、もし一般企業に就職することができたとしても、様々な理由によりますが継続して勤務できることは稀で、もし解雇された場合再就職はとても厳しいということが現実です。

そしてさらに大きな問題が、私たち親が年老いて我が子のサポートができないような時が必ず来るということで、そうなれば親元を離れ施設入所ということになります。親としては想像するだけでもとても苦しいことです。

このような現状をただ受け入れるだけで本当に良いのか、人任せにするのではなく親自身が元気なうちにもっと積極的に関わって、我が子たちのより良い将来を創る必要があるのではないか、そして順番でいけば必ずサポートを必要とする我が子達を残して逝くことの親なき後の不安を少しでも解消しよう。我が子達には、どんな障がいがあろうとも楽しい人生を歩んで欲しいという思いと願いからの始まりでした。

卒業後の進路のうち利用者の多い市内各施設は、常に定員いっぱいで選択肢も少なく、このままでは在宅も考えられる危機的状態だから、在宅を無くすために頑張ってほしいと先生からお話を伺い、まずは小規模作業所を開設することになりました。小規模作業所を立ち上げるにあたり、どんな仕事をして利用者(我が子たち)の皆さんにお給料を払うのかを考えなければなりません。そこで現状を調べてみると、内職や請負軽作業では一月働いても平均的なお給料は数千円程度が精一杯であることがわかりました。これでは昼食代にもならず、障害年金と合わせても将来のサポートを受けながら自立した生活を送るためには、全く十分な額とはいえる状況ではありません。そこで最終目標としては「源泉税を納めるだけの給料を払うこと」として、できれば健康的に体を使う仕事を考えることになりました。いろいろ情報収集を行った結果、私たちが設置できる規模では目標には届きそうもないのですが、高収益が望めそうな菌床栽培のしいたけにたどり着きました。

こうして「はみんぐばあど」は、しいたけ栽培を中心とした農作業を行う小規模作業所として、平成16年10月、船橋市立船橋養護学校(当時)おやじの会とそのOBが中心になり、先生方やPTAの皆さん、そして多くの方々にご支援いただき、いちよう会の小規模作業所として活動をスタートしました。その後平成20年にNPO法人の認証を受け、現在は就労継続支援B型と生活介護の多機能型事業所として活動しています。

はみんぐばあどで行っているしいたけ栽培ですが、本来春と秋が収穫期のものを、専用ハウスで温度管理を行うことで通年栽培を可能にしたもので、その結果一年を通して同じ作業を行うことができ、利用者さんの仕事としては最適な仕事になっています。その内容は、収獲と納品準備、菌床の浸水、ハウス内清掃などで、利用者の皆さんで分担し毎日の仕事としています。手前みそになりますが、本当においしい椎茸でスーパーや料理屋さんに納品していて、個人のお客様からも定期的にご注文をいただけるようになりました。お客様の「美味しかったよ」の言葉が利用者さんの励みになっています。

また、畑作業も通年行っています。春から秋にかけてがメインになりますが、雑草との戦いが続き、夏には虫と暑さとの戦いも加わります。利用者の皆さんが一生懸命お世話してなるべく農薬を使わないで育てたちょっと不揃いな野菜もおいしいと好評をいただいています。

このように夏暑く冬寒い自然相手の仕事を行うのは体力的にきついこともありますが、結果的には体が丈夫になるとともに、収穫の喜びを仲間と分かち合うことができ、利用者さんたちの働く喜びに繋がっています。病欠や欠席が少ないことが、なかなか自己表現をすることが困難な利用者さんたちの、はみんぐばあどに対する評価の表れであると思います。

そして、利用者さんへのお給料も昨年の県内平均で比較すると、約1.5倍の実績を上げることができました。しかし、まだ目標にはほど遠く私たちの大きな課題であることには変わりはありません。

これまで6年間、本当に大勢の方々にご支援をいただき課題を一つ一つ乗り越えながら、小規模作業所、就労継続支援B型事業所、多機能型事業所へと事業拡大をすることができました。ただし、これで終わりではありませんし課題もたくさんあります。毎年、特別支援学校高等部からは約20名程度の施設利用希望者が卒業し、市内各施設を利用するようになります。はみんぐばあどでは数年後には定員に達してしまいます。そうするとまた次の事業所を立ち上げる必要が出てきます。また、これまでの事業は通所事業だけですから、親が我が子をサポートできなくなった場合の入所事業も早急に手掛けていかなければならないと考えていて、グループホーム・ケアホーム開設に向けて準備を始めました。

地域の中で地域の一員として暮らし「どんな障がいがあろうとも楽しい人生を送ってほしい」私たちいちよう会の設立趣旨の実現を目指して、利用者さんの一生懸命に働く姿と笑顔を糧に、これからも一歩ずつ進んでいきたいと思います。

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【NPO法人いちよう会 はみんぐばあど】

船橋市松が丘3-72-26
☎047-464-2028
【農園】
船橋市古和釜町861
☎047-469-6366

※この記事に記載の情報は取材日時点での情報となります。
変更になっている場合もございますので、おでかけの際には公式サイトで最新情報をご確認ください

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