2009年05月01日 配信

 生きる喜びが持てる様な福祉作業所を目指して

09_02_06rihuto.jpg特定非営利活動法人
船橋障害者自立生活センター
(指定相談支援事業所「WAVE船橋」)
代表理事・ピアカウンセラー
相談支援専門員(障害者ケアマネージメント従事者)

杉井 和男

時の流れは本当に早いもので、私が船橋を拠点として仲間と共に「自立生活センター」の活動を始めてから18年余り。そして、その活動の理念を具現化する形で、長年住み慣れた親元から離れて、市の中心部に程近い所にアパートを借りて、いわゆる「自立生活」と呼ばれる暮らしをはじめて、もう15年が過ぎた。

自立生活センターの理念とは、「どのような障害があっても、社会的に不利な状況にあっても、地域の中で活き活きと自分らしい生活をすること」であり、それが可能となる社会の実現こそが究極の目標である。では、「自分らしく生きる」ために必要な条件とは何か。前号のこのページで宮尾さんが紹介してくださっているように、私たちが考えるキーワードは「自己選択」、「自己決定」、「自己責任」の3つ。誰もが自分の人生の中で、この3つの要素が十分に尊重されてこそ、本当の意味で自立した自分らしい生活と言えるのではないだろうか?

冒頭から理屈っぽい文章になってしまったが、要は、自分の人生や細かく言えば毎日の過ごし方や今晩の献立に至るまで、自身に関わる事柄について自分で選んで自分で決める、ということである。大方の人にとって、この理念は「何を今さら…」と言われるほど至極当然のものとして受け入れられているように思われる。

しかし、早産で超未熟児として産まれたことによる「脳性麻痺」の障害を持ち、歩くことはもとより、立つことも出来ず、毎日の生活の中でもベッドと車いすの間の移乗、それに着替えや排泄などの身の回りのことにさえも他者による手助けを必要とする私にとって、上記の理念を本当の意味で実現することは必ずしも容易ではない。つまり、障害のない人に比べて他者の力を必要とする比重が高い分だけ生活の中で主体性を維持することに困難を伴うということである。自立生活センターでは、障害を持つ人が集まって話を聞き合う「ピアカウンセリング」や自立に向けて先輩の話を聞いたり、社会的経験を積み重ねる「自立生活プログラム」などの事業を通して主体的に生きるためのイメージトレーニング的なことを行っている。そうした活動を通して自分の気持ちを確認し、同じ悩みや経験をした仲間の存在を知ることで自信をつけて意欲を高めることを目的としている。その他にも、県から指定を受けた「相談支援事業所」として、いわゆるケアプランを作ったり、相談を受けたりという活動も行っており、そうしたいくつかの事業や活動を通じて、どのような障害があっても地域の中で生きていける条件を創ることを最大の目標としている。

そして、今年度は福祉作業所を開設するという新しい活動を始めることになった。「地域で生きる」と言っても、アパートの部屋で孤独な生活をすることになってはその意味が半減してしまう恐れもあるので、作業を通して社会とのつながりをつくり、障害があっても人の役に立つことが出来る存在であることを実感することで、大げさに言えば「生きる喜び」を見いだすことが出来るような作業所を目指してスタートラインに立とうとしている。具体的には、従来、「自立生活プログラム」の中で続けてきたパソコン教室の経験を生かして、名刺やチラシなどの軽印刷を中心とする作業を行う。重い障害を持つ者にとって、パソコンを使うことで自己表現の幅が拡がったり、コミュニケーションの機会が大きくなるなどのメリットがあり、生活をしていく上で一種の武器となっている。私自身、パソコンを使うようになって、他の人にも読める文字表現が出来るようになり、人間関係の輪が広がった経験を持っている。その経験を多くの仲間に伝えて、人間同士のつながりをサポートする道具としてのパソコンの可能性を知ってもらいたいと思っている。私たちの作業所のもう一つの特徴は、障害を持つ人自身がスタッフとなって運営をすることである。従来の福祉作業所の多くは、障害者の親や特別支援学校の先生が中心となるケースが一般的なのだが、私たちの作業所は私を含めて障害を持つスタッフが中心的に運営に関わって、障害を持つ利用者と仲間同士の関わりの中でお互いに助け合いながら活動を続けていくことをモットーにしている。

100年に一度と言われる経済的に困難な状況の中でスタートすることになり、前途多難は必至な情勢である。本誌の読者をはじめとして、地域の皆さんのご支援とご協力が困難を乗り越える原動力になるものと考えている。毎日の活動をサポートしてくださるボランティアの方も大募集しているし、作業所に仕事を依頼してくださる方がいてくださると、メンバーの張り合いにもつながる。とにかく、一度覗いてみてください。そして、障害者の社会参加と自立を目指す活動に対して、幅広い皆さんのご支援を心からお願いするばかりである。

特定非営利活動法人
船橋障害者自立生活センター
船橋市本町2-4-4 花島ビル1階
047(432)4554

http://www.cil-funabashi.org/

※この記事に記載の情報は取材日時点での情報となります。
変更になっている場合もございますので、おでかけの際には公式サイトで最新情報をご確認ください

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