2021年05月30日 配信

船橋市内には畑が広がるエリアも多く、特に西船エリアなど宅地が多い場所でも農業を続けている家がたくさんあります。後を継ぐ農家もあって、船橋の農家は20代、30代といった若い人も多い印象です。都市型農業と呼ばれる船橋の農業では、今、どんなことが起きているのか見てみましょう。

 
船橋市農業青少年クラブ(船橋4Hクラブ)
右から「かまくら農園」(船橋市印内)鎌倉優希さん(30)、「玉井」(小室町)玉井正悟さん(28)、「とまとや浜田」(上山町)浜田凌さん(26)、「芳蔵園」(二和東)加納慶太さん(28)。4Hの中で役員をしているメンバーそれぞれが違う作物を育てている。3ページを見れば、栽培している作物がわかるかも?

若者同士の横繋がりや夫婦の絆も実践力に

 船橋市の農業就業人口は「農業センサス」と呼ばれる5年に1度発表される統計によると全体で1917人、うち349人が44歳以下であった(2015年度)。出荷先に関係なく若者農家が集まれる「船橋4Hクラブ」代表の玉井正悟さん(28)によると「船橋市の4Hクラブは、ほかのエリアに比べて会員数が断然多いです」とのこと。同クラブがあったメリットとして、「4Hクラブがあったおかげで野菜の農家さんと知り合えた。勉強会もできるのが強み」と副会長の加納慶太さん(28)。

 ほかにも動きを見せているのが、農家の嫁や親の後を継いだ女性陣。農作業を手伝いながら、SNSでの発信や新しい発想でのビジネスなどでも農業を盛り上げている。


市役所敷地内で開催の「イブニングマーケット」でも4Hは出店した

「船橋4Hクラブ」って何?
 正式名称は「船橋市青少年農業クラブ」。4Hクラブは全国の市町村や道府県を単位として組織され、クラブ員の健全な発展を図り、日本農業に貢献することを目的としています。その船橋版が通称「船橋4Hクラブ」。JAいちかわ船橋青年部もあるが、それとは異なる。
 現在会員は21人。月1回、会員ミーティングを行う。市のイベントなどに絡んで「野菜の販売会」に出向いたり、幼稚園の芋掘りに協力することもある。
☎09045464154(玉井) 


農業女子研究所 初期メンバー 三須美智子さん
近年SNSでも話題の「三須トマト農園」(船橋市印内3-37-30)の園主の妻・美智子さんは、全国の農業女子の輪を育んでいる。「農業女子プロジェクト」から派生した「農業女子研究所」の初期メンバーとして、各地の農業女子と交流をしながら、つながりのある生産者の商品を自分の店舗で販売したりもしている。

船橋市内にはこんな農家さんがいます!

船橋では、どんな作物が収穫されていると思いますか?梨、小松菜、人参…あたりを思い浮かべる方も多いでしょう。実は船橋は、ブロッコリーやキャベツといったほかの野菜も千葉県内での栽培面積が上位だったりと、いろんな作物が作られているんです。


船橋市での作付面積が県内上位に入る作物を一部挙げただけでも、こんなに!※この統計は毎年公開されているものではないため、現在の数字とは異なる部分があるかもしれません


4月21日、今年初の船橋市場への「船橋にんじん ベーターキャロット」の出荷日となった。現在、出荷用にベーターキャロットを栽培しているのは左の写真の4軒の農家のみとなる


5月11日には船橋ブランド野菜の生産者の代表が集まり、松戸徹船橋市長に今年の出来栄えが報告されました。右からJAいちかわ船橋人参共販委員会委員長・飯島さん、松戸徹市長、JAちば東葛西船橋葉物共販組合組合長・飯塚和之さん、JAちば東葛西船橋枝豆研究会会長・岩佐宗高さん

 
夏と言えば、「船橋のなし」。品種は「幸水」「豊水」「新高」のほか、「あきづき」や「かおり」といった品種を扱う直売所も増えている。法典地区、二和三咲、大穴、坪井のほか市内北部に行くと、梨畑が広がっている。

 


冬になると楽しみにしている人も多い「いちご」。近年はいちご狩りを受け入れる農家も増え、家族でレジャー感覚で訪れられる場所となっている

通販、インスタ、キッチンカーも!
今どき農家さんこんなことしてます!
ウェブサイトを立ち上げ採れたて野菜を通販
江戸時代から続く専業農家「かまくら農園」(船橋市印内)は2020年12月にホームページを立ち上げ、今年1月から公式LINE登録者向けに野菜のセット販売を開始し、話題となっています。朝に収穫した野菜を当日着で配送するという同通販システム。「昨年は梅雨の長雨で夏野菜に影響が出たかと思えば、豊作で価格が下落。一方、新型コロナの影響で飲食店への出荷が断たれ、過去にない試練の年だった。農家の生き残りの道を探り、ネット販売やSNS配信を始めました」と園主の鎌倉優希さん(写真一番左)。
 

鎌倉さん一家。通販サイトURLは「かまくら農園」で検索するかhttps://kamakura-farm.com/ から。公式LINEアカウントもあり、フォローすると割引クーポンがもえらる仕組みになっている
 
 
SNSで情報発信や消費者とのコミュニケーションも
インスタグラムやツイッターで、作物を栽培している様子を配信している農家さんもたくさん! 「少しでも作物のことを知ってもらいたい」と始めている農家さんが多いようです。「三須トマト農園」のインスタグラムでは、これまでに数回、農作業のライブ配信もしていました。
 
 
直売所を持たない農家「鈴果園」(船橋市金堀町)のインスタグラム。「消費者の方とは普段、接点がないので、こうしたSNSで消費者の方とコミュニケーションが取れるのはうれしいです」と鈴木明道さん。
 
 
 
梨とブドウ、梨と野菜、梨と米…!
市内梨農家の多くは梨を栽培するだけでなく、他の野菜なども栽培し販売しています。棚を生かして、ブドウを栽培する農家も多く見られます。が、中には、梨と米を作る農家さんもいるんです!
 
梨農家であり、米も作る「鈴果園」。梨畑は鈴木明道さんが、田んぼは明道さんの父が主に見ている
 
 
農家に嫁いだお嫁さんがフルーツサンドをメインにして加工品を売る移動販売を開始
農家に嫁いだお嫁さんも、新しいアイデアで驀進中! 「芳蔵園」に嫁いだ加納智恵さんは、今年、キッチンカーで新しい事業を立ち上げました。夫・慶太さんが取り組む「廃棄野菜をなくしたい」という思いを実現すべく、加工品を販売できる「農家のアンテナショップ」をキッチンカーで立ち上げました。出店場所は「FromFarm(フロムファーム)のインスタグラムで確認を。
 
    
 

金曜の日中は「芳蔵園」(船橋市二和東2-7-7)の店先に出店していることが多い。直売所にはハンモックもあり、梨の木の下で自分の椅子を持参してチェアリングも楽しめる
 
 
軽トラに採れた野菜を積んでSNSで呼び掛けながら移動販売
農家さんの中には軽トラックや軽バンに収穫した野菜を積み、直売所や畑とは違う場所で野菜を販売している人もポツポツと増えています。
 
写真上は「重兵衛園」(船橋市高根町)が軽バンで夏季のみ実施している移動販売。写真下は、20代続く農家「三須トマト農園」が西船橋駅近くに出店している軽トラック。どちらも他の農家の野菜や果物なども一緒に販売しています。
 

女性らしいデザインの軽トラックで園のトマトだけでなく、近所の農家さんの野菜も販売する「三須トマト農園」
 
 
市内飲食店などとコラボしてオリジナル商品開発も
農家さんが飲食店さんに直接交渉して野菜を使ってもらっているケースもあれば、飲食店側も地元の野菜を使えるというメリットを生かし、その生産物のために商品を開発する店舗もあります。写真は梨農家の梨を使った季節限定「梨マカロン」! 市内にはほかにも、小松菜、トマト、イチゴなどいろいろな産物とコラボしたメニューや商品がたくさんあるので、探してみるのも楽しいです。
 

梨農家「船芳園」(船橋市二和東2-6-1)の梨を使った「梨マカロン」は「JUGON」で梨のシーズンにだけ登場します
 
 
 
規格外となる野菜や果物の廃棄削減を目指す取り組み
 

「芳蔵園」が作った梨のドライフルーツ写真提供:芳蔵園
 
規格外の生産物とは
 
 農家が育てた野菜や果物がスーパーの店頭に届くまでの流れとしては、まず収穫された生産物はJA(農業組合)に出荷、JAから卸売市場で売買され、そこからスーパーへ流れていくのが主な流通経路となります。
 しかし、そのように出荷するためには生産物によってさまざまな基準が設けられ、大きすぎ、小さすぎ、キズがあるなど、規格に当てはまらないものは、たとえ味は良くても、その見た目から出荷できないものとなります。さらに、「人様に食べてもらえるものではない」と考える農家も多く、畑で処分されてしまうことが多いのだともいいます。
 
廃棄を減らすためのさまざな取り組み
 
 「それはもったいない」と、船橋市内では2011年にちば東葛農業協同組合が「小松菜パウダー」を製造。「にんじんパウダー」もあり、今もさまざまな場所でパウダーは使われています。 
 梨についても毎年廃棄の対象になってしまうものが発生するため、市内飲食店や菓子製造業者がそうした梨を生産者から購入し、梨ドリンクやジャム、ジュレにするなどさまざまな連携も生まれてきました。
 さらに昨年には「この問題は農家が取り組まなくてはいけない問題でもある」と梨農家「芳蔵園」(二和東)の6代目園主・加納慶太さんが立ち上がり、昨年、廃棄ゼロを目指す取り組みとしてクラウドファンディングで資金を募ったところ、多くの人が関心を持ち、最終的に集まった額は100万円を越えました。同園では昨年発生した規格外の梨をドライフルーツやジュースなど、さまざまな加工品へと変える一歩を踏み出すことができたのです。加納さんは「いつかは『船橋の廃棄がゼロ』を目指したい。農家の可能性を広げることをまずは自分がやっていきたい」と熱い思いを話してくれました。
 
農家がSNSで発信することで地域の中で動きが発生
 
 こうした取り組みについては、農家がSNSを使って、私たち一般人が普段あまり目にしないリアルな農家の日常を届けていることが、新たな動きにつながっているようです。
 つい最近では、6月上旬まで収穫時期となる「船橋にんじん ベーターキャロット」を生産する「重兵衛園」(高根町)がSNSで廃棄対象のニンジンがたくさん出てしまっていることをインスタグラムで発信すると、それを見た地域団体や飲食店が直接農家に連絡を入れ、廃棄となるニンジンを引き取るという動きも発生。地域団体が「#破棄野菜救出プロジェクト」として事情を説明しながら地域の人に販売したり、店では加工して商品を作るなどして、廃棄の削減に貢献しました。「みなさんが協力してくださることが本当にありがたい。地域のみなさんの横のつながりってすごいですね」と地域の輪に重兵衛園の仲村学さんは驚いていました。
 

※この記事に記載の情報は取材日時点での情報となります。
変更になっている場合もございますので、おでかけの際には公式サイトで最新情報をご確認ください

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