2010年01月01日 配信

収穫を終え秋が深まる頃になると梨農家では、
翌年の収穫に向けた準備を始める

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 梨の木は落葉樹。枯葉が落ちきると堆肥を入れる合図

 

 

 収穫が終わり、秋が深まると落葉樹である梨の木は、徐々に葉を落とす。落ちた葉はそのままにしておくと、梨の木にとって有害な病気を引き起こすこともあるため、本来は梨園の外に持ち出し焼却処分するのが望ましいのだという。

 ところが現在、市の条例では剪定によって出た枝や落ち葉などを畑で焼却処分する事が禁止されている。そのため枝は有料で業者に処分を依頼し、落ち葉は『堆肥』と一緒に畑に混ぜ込むのだという。

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 【石灰】酸性に偏った土をアルカリ性で中和する。

 

 

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【リン酸、カルシウム】

根からでる根酸により溶解して吸収する栄養分

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【菜種ミール】葉や実の栄養分になる。植物の油粕

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【有機質肥料】窒素・リン酸・カリなどの有機質肥料


天然のものを使った堆肥しかし問題も多い。

 

 

 『堆肥』とは、鶏糞・牛糞・馬糞などをワラや落ち葉と混ぜ発酵させて作る。堆肥を入れることで土壌の改良効果や肥料としての効果を期待できるのだが、この堆肥を入れる作業が農家にとっては一苦労である。

 

 

 まず、鼻につく臭い。以前は、馬糞やワラなどを畑の近くに積んで置き発酵させてから堆肥として使用していたが、雨に濡れたり湿気を帯びたりするととても臭う。一昔前であれば周囲は畑だけだったので、それ程気を遣うことは無かったが、都市型農家である船橋市の場合、畑のすぐ横が住宅ということも多い。農家によっては周囲の住民を気遣って堆肥作業は早朝や夕方に行う場合もあるというが、最近では、高熱処理で人工的に乾燥させ臭いがしないように加工した鶏糞や牛糞など、天然の肥やしを購入して日中に作業をする例が増えているのだという。

 

 

 臭いの問題や堆肥を作る手間など様々な部分で化学肥料を使ったほうが楽になるのだが、それに変えることで土壌に浸透した化学成分がどのような影響を与えるか分からないので最近では、近隣の養鶏所や牧場と提携し糞を調達し一から堆肥を作っている。実際、体から出たものであれば土壌にも優しいし、梨の実そのものの味も良いのだという。

 

 

 もう一つが、腰の痛み。かがんだ姿勢で作業をする事が多いので男女ともに腰痛(ちなみに、梨園の枝の高さは園主の背の高さに合わせて設定されているが、実が成ると実の重みで20cm程度枝が下がってくる)に悩まされる。女性の場合は特に上を見上げての作業が多くなるので肩こりなどの症状に悩まされることも多い。

 そうまでして堆肥を作り畑に入れる目的は、

①土壌の改良(放って置くと土壌が酸性化してしまうので石灰などを混ぜたアルカリ性の堆肥で中和させる。最近では、土壌に優しい微生物を使った環境に優しい土壌改良剤を使用するケースも見られるようになっている。また、土壌に空気を入れることで根に呼吸をさせる役割もある)

②土壌に栄養を与える(菜種などを使って実や葉への栄養を増やす)

以上の二点に集約される。

 

 堆肥の種類

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【右】牛糞(左)と鶏糞(右)のミックス

【中】ショベルでトラクターの荷台に堆肥を積み込む。

【左】馬糞ベースの堆肥

 


堆肥の作業

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上段左:堆肥と菜種カスなどの肥料を混合して散布します

上段中:一人では重労働なので、夫婦や家族で一緒に作業することが多い

上段右:歩いて作業する作業する際の散布機

中段左:散布機

中段中:機械によって堆肥を散布するスグレモノ

中段右:木が低い為よそ見をして頭をぶつける事も…

下段:スコップで堆肥の散布をする場合


日頃から研究に余念のない生産者

 

  農業に関する最先端の知識は、県の農林振興センター(柏市)、船橋市農業センター(船橋市金堀町)、果樹園芸組合研究部、などから収集する。

 『肥料の設計』や年明け頃に行う『枝の剪定』の選択の上手さが作物の出来・不出来を大きく左右するので各農家では各施設・組織が実施する勉強会などで栽培技術の向上に努めている。その他にも、市外・県外でも組合を通じて梨農家専門の勉強会などの開催情報が伝わってくるので熱心な農家はこれらにも参加し収穫量を伸ばしている。

 

 

かつて日本の梨の代名詞だった『長十郎』

 

 

 市内における梨農家は大多数が40年ほど前から梨の栽培を始めている。かつては、『長十郎』がという品種が多くみられたが、最近では、消費者の好みもあって『幸水』や『豊水』など糖度が高く多汁な種類の生産が多くなっているが、これらの品種よりも『長十郎』のほうが手間がかからなかったという声も聞く。また、木は寿命が近づいてくると一度の収穫当たりの生産性が落ちてくる。そこで、若木の植樹を行うのだが、植樹を行ってから2~3年は梨が一つ二つしか実らない。5~6年程度でようやく一本の木から100~150個くらい収穫できるようになる。

 

 梨の木

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梨の木の年齢は枝の節を数えてみるとすぐにわかる。

豊水や幸水などは樹齢40年ほどで世代交代を迎える。

写真左が40年くらいの樹齢のもの。右は5~6年くらいのもの。

幹の太さがまったく違うのがお分かりだろうか?


天敵から梨を守る

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左:カラスや熊蜂の害を避けるため梨園にはネットを張る。

右:梨の実を食べる熊蜂を避けるためポットにジュースをいれ熊蜂を誘導する。


農機の種類

農機には非常に魅力的なデザインで男心をくすぐるものが多い。

影に日向にと農家を助ける機能性に優れ、力強さを感じる農機たちをご覧あれ。

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世界中で愛される船橋の梨

 

 

 梨の販売は、船橋市の梨農家の場合ロードサイドにある直売店での直接販売及び贈答用に出荷するものとで全体の8割近い販売量を占める農家が多い。残りはインターネットなどを活用した新しい販売手法も増えてきている。市場に出荷しているのは概ね1~2割程度。最初は直売所に直接購入に来てくれたお客さんが家族や親類向けに贈答品として贈るようになった。ところが贈った先で梨の味に興味を持った人が「この間の梨がとっても美味しかったから○○さん宛に送っておいてください」と顔もみたことのない購入者の数が増えている。このように船橋の梨は、口コミによって世界中に出回っており、多くのファンが毎年この梨を楽しみにしている。そして、その梨の味を決める根っこの部分が天然のものを大切にした『堆肥』、『剪定』に始まる栽培技術。また、これを上げるべく研究を絶やさない梨農家の情熱に拠るものであることは疑いようのない事実である。

 nashi_zu.jpg梨の生産シェア

取材協力:花嶋さん、青山さん

※この記事に記載の情報は取材日時点での情報となります。
変更になっている場合もございますので、おでかけの際には公式サイトで最新情報をご確認ください

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