2016年08月01日 配信

8/1(月)船橋在住の認定看護師が熊本支援の活動を語る

被災地支援活動からみた、準備しておくべきこと

IMG_2646zunousien IMG_2623kumamotosien
   

 船橋市在住の小児救急看護認定看護師上吉原良実さんが、震災直後に熊本県入りし、現場で見てきた避難所の運営について話す講演会「熊本地震、被災地の現状から」が8月1日、市役所近くのkatanaオフィス船橋(船橋市御舟町)で行われた。

 上吉原さんは、救急医療に関する国内トップクラスの実績を持つ看護師。熊本地震の1回目当時は、市川市内の病院で夜勤に入っていたという。その後の本震で壊滅的な打撃をうけた熊本県に支援活動入りする徳洲会病院系の災害派遣医療チーム「TMAT」に知人のつてを辿って志願して、現地入りした。

 震災から3日後の4月17日、成田空港から自費で熊本県入りした上吉原さんは、人口1万8000人程度の熊本県御船町で避難所の巡回訪問などをその日のうちにスタートした。御船町は町内の医療機関が被災で全滅したため保健センター内に仮設診療所が開設された。

 「小さな町だったので保健師さん達が町内の患者さんを全て把握されていた。実際の現場では保健師さん無しには支援活動ができなかっただろう」と、当時の様子を話す。実際にここでは保健師たちの力を借りて、24時間診療と無償診療を実施したという。

 並行して、避難所の巡回を開始。上吉原さんの所属していた「TMAT」では夜間の活動も行った。「実際に報道されていませんでしたが性犯罪や盗難もあり治安が悪い。女性一人で夜間の巡回は禁止されていました」と話す。チームに男性が加わり、駐車場での車中泊を巡回、医療行為が必要な患者がいないか見回ったという。

 「東日本では職も一緒に失った方が多かった。熊本の震災では仕事はある方が多く、昼間は職場に行っている。夜にならないと現状がつかめなかった」と上吉原さん。

 そのほかにも、避難所生活では食物繊維を取りにくく「便秘」に悩まされる被災者が多い事や、衛生面での不安が多く、小さな子どもの場合に親が医療行為を必要と認識しない為「とびひ」「ノロウィルス」などの伝染性がある病気に避難所全体がかかる例などを紹介した。

 また、避難所では高齢者や乳幼児などの災害弱者に注意が必要だとする一方で、「乳幼児は自分で発信することができない。こうした埋もれてしまう声をどう拾っていくのかが課題」と上吉原さんは話す。

 このほかにも、避難所に居場所を確保した被災者がスペースをシェアしたり、移動する際のストレスについても触れ、「最初に避難所を開放する際、細かいルールを作っておくことが重要」と話す。また、特性のある避難所の大切さにもふれ「福祉避難所」「乳児避難所」などに関してはただスペースを準備しておくだけでなく、細かい規定を決めておくことも重要だと話した。

 講演の最後に、熊本県西原村の食堂「たんぽぽハウス」の事例など船橋の協力者が支援に協力した例についてふれた。

 同食堂では、近隣の避難住民の健康を考え、一食10円などの大赤字価格で食事を提供していたという。話を聞きつけた上吉原さんは船橋市内と全国の知り合いに対して寄付を募った。1か月ほどで20万円以上を集め、熊本県に送ったという。

 そのほか、熊本市東区の無認可保育園「どれみリズム保育園」や西原村立保育園などで、子どもたちを勇気づけるワークショップを実施した。船橋市場の青年部から駄菓子とおもちゃの寄付を受け、駄菓子屋さんごっこを、ふなばしハワイアンフェスティバル実行委員会メンバーからは「プルメリア」の造花の寄付を受け、髪飾りを作るワークショップを行った。

在宅で生活していた人たちの避難所での生活

 「最近、在宅医療を推進する流れがあるが、『何とか在宅で生活していた人』は、避難所で認知症や精神疾患を発症する例が多い。避難所はゴールではなく、中継地点としてその後の行く先を確保することが大切」と話した。

 また、TMATで学んだ災害活動における鉄則として「外から来た人間は悪者で良い。地域の人たちで回せるようになることが大切。ともすれば、ヒーローになってやろうという趣旨で被災地入りするチームもあるが、地域の人を悪者にしてはいけない」と、教えられたのだという。

 熊本での災害医療派遣を通じて感じたのは、全般に渡っての準備不足。行政と一緒に有事に備えたパッケージを作っていく事が必要で、民間の立場からの対策には限界を感じていた。

 現在、上吉原さんは復興庁の政策調査官として毎週のように被災地入りし現地調査や各地の行政と一緒になって有事に備えたマニュアル整備、啓発などに経験を活かしている。

※この記事に記載の情報は取材日時点での情報となります。
変更になっている場合もございますので、おでかけの際には公式サイトで最新情報をご確認ください

この記事を書いた人

MyFuna編集部

MyFuna編集部

スポンサードリンク

記事の場所
関連キーワード