2012年01月30日 配信

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 「早く寝なさい。サンタさん来ないぞ」娘はそれまで熱中していたゲームをやめ、布団に入った。“サンタさん”それはこの時期だけの魔法の呪文。最近何かと生意気なことを言う娘も“サンタさん”の一言でいうことを聞く。でも、その魔法も今夜で終わり。

 

 サンタクロースはいるって信じていたのはいつまでだっただろう。

 友達の前では「まだ、信じているはガキだよな」と格好つけたけど、でも本当はずっと半信半疑で、クリスマスが近づけば、ちゃっかりいい子になっていたのを覚えている。

 

 そろそろかな……。

時間を確認すると、隠しておいたプレゼントを抱え、音を立てないように部屋のドアを開けた。プレゼントはキャラクターの太巻き寿司が簡単に作れるというおもちゃ。将来はお寿司屋さんになりたいそうだ。

娘は静かに寝息を立てて眠っている。枕元には小さな赤い靴下。プレゼントは到底入らない。

この子はいつまで信じているのだろう。

 娘の小さな手のひらをそっと指でなでてから、靴下の横にプレゼントを置いた。

 もう、ちょっと、もう少しだけ、いいよな……

部屋を出ようとした瞬間、背中から小さな声が聞こえた。

「パパ、ありがとう」

聞こえないふりをして静かにドアを閉めた。

【筆者プロフィール】

深澤 竜平
昭和52年、山梨県生まれ。
2006年、船橋市に転居し翌年から小説創作を開始する。
2011年 「応援席のピンチヒッター」にて
       「第23回船橋文学賞」文学賞を受賞

※この記事に記載の情報は取材日時点での情報となります。
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