クリスマスが近い。
夕食のとき、おじいちゃんがニコニコしている。何かいいことでもあったのかな。
おじいちゃんは、ときどき上着のポケットに手を入れる。食卓についたときから、ユキはずっと気にかかっていた。おじいちゃんは何か言いたげだ。ユキと目があった。
「クリスマスプレゼントをもらった」
「だれから?」
真っ先に聞いたのはお兄ちゃん。おじいちゃんにプレゼントあげる人? 思いつかないなあ。お母さんでなければ、私しかいないのに。お父さんはありえない。ユキはじれったくなった。
「ね、だれからなの」
「これだ」
おじいちゃんの手のひらに小さなものが三つ。
「え、それだけ‼」お兄ちゃんは大げさだ。
「風邪を引かないようにって、やたらと声のでかい男の子が、学校帰りにくれた」
デカゴエも、いいところある。しかし、のど飴三個とはね。でも、ユキはちょっぴりデカゴエを見直した。
「もうひとつ、あるよ」
出てきたのは、一目でわかるクリスマスのメッセージカード。さっと横取りして、読み出したのはお兄ちゃん。
……いつもスクールガードありがとう。からだに、きをつけてがんばってください。かえりのクイズ、たのしいです。
2ねん3くみ……
「おじいちゃんの、小さい恋人からだ」
「小さい恋人か。うまいことを言うなあ。リュウは」
お父さんは妙に感心している。お兄ちゃんは得意顔だ。
「からかっちゃあ、かわいそうだよ」
ユキが怒ったように言う。
「スクールガードで小さい恋人たちにたくさん会うから、おじいちゃんは元気になったのね」
お母さんがうなずきながら言った。
おじいちゃんは、照れくさそうにカードをそっとポケットにしまった。
ユキはみんなの笑顔を見てなんだかうれしくなった。
【筆者プロフィール】
北澤朔(きたざわはじめ)
山形県鶴岡市出身、船橋市在住
1992年『自転車』で第四回船橋市文学賞受賞
著書/『見つめる窓辺』(文芸社)
『黄色い』(日本文学館)
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