続きです。
PM12:40
昼食。
飛行機が無事離陸し、しばらくすると機内食。
直前の「ビーフ・オア・チキン?」という名台詞に対し超絶なイントネーションで、
「ヴィーフ!」
と答えるために下唇を軽く噛んで「ヴィ」の準備をするも、
問答無用でトレーを渡される。
あ、選択の余地ないのね。
でも、良い匂い。
中身はチキンでしたが、お腹の空いていたオイラには関係ありません。
ありがたく頂きました。
そして、
CAがトレーを下げるのと同時に、「コーヒーはいかがですか?」と聞いてきました。
オイラは普段あまりコーヒーを飲まないのですが、
そこはそれ、
折角です。
食後のコーヒーを満喫したいじゃないですか。
カップを渡し、注いでもらう。
CAはニコやかに「お砂糖とミルクは?」と勧めてきます。
そこはそれ、
格好良く決めたいじゃないですか。
「ブラックで大丈夫です。」
か、格好良い〜〜〜!!オイラ!!
CAに後で「ホテルはどちらにお泊りですか?」って聞かれたらどうしよう・・・。
などと考えつつコーヒーを一口。
・・・・・・・・。
ニガイ・・・・。
・・・・・・・・。
ふ、ふんだ!!
別にいいんだから。
いつもブラックなんだから!!
味だって詳しいんだから!!
これ、
ブルマンでしょ!?
ブルマン!!
やっぱりコーヒーはブルマンに限るよね。
あー美味しい!
おかわりしようかな!!
そのくらい美味しいんだから!!
・・・・・・・・。
そして、
10分後、
「お腹痛い・・・。」
・・・やはり慣れない事はするもんじゃありませんね。
PM2:30
金浦空港 到着。
飛行機は無事着陸。
落ち着いてはいられません。
ギムさんが出口で待っているはずです。
荷物を持って急いで入国手続きへ。
窓口へ行くと、流石に外国人用は混んでいます。
「これは少し時間がかかるなぁ・・・。」と思っていたら係員が手招き。
え?
オイラ?
何だろう?
ギムさんが何か手配して特別なルートで入れるのかな?
そう思いながら係員の元へ。
歩いて移動し、3mくらいの距離になった時でしょうか。
係員が「ん?」という顔をしました。
オイラも立ち止まり、「え?」という顔をします。
次の瞬間、
係員、クスッと笑い、何となく謝っている風。
そしてオイラの肩に手を置いて元いた外国人用入国窓口へ誘導。
係員はそのまま笑いをかみ殺して去っていきました。
後で考えてみれば、おそらくその係員は「自国の窓口はこっちだよ。」って教えていたのかもしれません。
簡単に手招きしただけでしたから。
つまり、
オイラを韓国人と間違えたと思うのです。
うん、
もうね、
涙も出やしねぇ・・・。Σ( ̄Д ̄;)
PM3:00
ギムさんと再開。
入国手続きが終わり、そのまま出口へ。
キョロキョロと辺りを見渡す。
プラカードや看板を持っている出迎えの方たち。
その中にギムさんの姿はありませんでした。
まだ来ていないのかな?
どうしよう。携帯に電話してみようか・・・。
でも、お互い言葉が通じないしなぁ。
と、思っていたら視界の端でダッシュでこちらに向かってくる影あり。
顔を向けるとギムさんでした。
しきりに頭を下げています。待たせたことを謝っているようでした。
いや、大丈夫ですよ。そんなに待ってませんから。
ギムさんの手招きで移動。
どうやら外にタクシーを待たせているようです。
そのくらいのことは言葉が分かんなくたって雰囲気で分かります。
ギムさんと小走りにタクシー乗り場まで移動。
しかし・・・通訳の方はいないのかな?
ギムさんは助手席に。
オイラは後部座席へ乗り込む。
ギムさんが運転手へ行き先を告げ、移動開始。
ギムさんは携帯を取り出し、何かメールを打ちはじめました。
そしてオイラを振り返り、画面を見せます。
『通訳は明日になります。
今日の通訳は夜8時には李さんが来ますので、
お話は李さんを通して出来ます。
それまではサイトの通訳機能を使ってします。
とりあえず劇場に向かっています。』
勿論、数回に分けてですが、おおよその内容はこんな感じでした。
オイラは「カムサムニダ」と答え、笑顔を向けました。
ギムさんも笑顔を返します。
うむ。笑顔さえあれば何とかなる。
PM4:00
劇場到着。
タクシーで移動すること約1時間。
大学路へ到着しました。
韓国では演技学校が多く、国全体で80校ほどあるそうです。
そして、この大学路では劇場が集約していて、大中小合わせて100近い劇場があるとの事でした。
日本とは違い、小屋を借りるよりも運営したほうが安くなるらしく、小劇場を持っている劇団も多く、ジョーカンパニーさんもその一つでした。
ジョーカンパニーさんの劇場は大学路から少し離れたあるビルの地下。
コンクリートビルの表面に木製の板を貼り付け、木造風な建物です。
結構良い感じ。オイラ好きです。
出入り口のすぐ脇には、ちゃんとチケット売り場があり見ているだけでワクワクします。
壁には横1m、縦3mほどの大きな看板が立てられており、男女が携帯で会話している絵が描かれています。
韓国版「月は今日も僕を見ている」の看板です!!
デカイ!!Σ(゚д゚;)
ギムさんの案内で劇場内へ。
現在大幅な改装工事をしているらしく、この日は空調工事をしていました。
エアコンを新しくするようです。
そして、お客様の座席も一新するそうです。
全ては今回の公演を成功させるため。
相当な費用がかかっていると思います。
オイラ、背中に嫌な汗をかき始めました。
舞台の広さはあらかじめ聞いていたとおり。
7m×7mの舞台。
客席数は80席ほど。
日本の小劇場と変わりません。
とにかく客席が近い。
これは誤魔化しがきかない。
「表情」も「間」も分かってしまいます。
でも、
オイラは、このくらいの空間が大好きです!!
まさしく劇団とお客様が一体となれる空間。
奇跡を起こせる広さです。
ギムさんに撮影許可を頂き、楽屋から調光室まで激写。
実際に舞台の床の感触を確かめたり、
客席のあらゆる所に座ったり、
調光室から客席・舞台を眺めたり。
一通り落ち着いたところでギムさんが手招き。
着いて行くと、そこには大道具が。
サイドボードや机。
ちゃぶ台。
プレゼン台も。
おそらくジョーカンパニーさんが自作したのでしょう。
ニスを乾かしているようです。
バッチリですよ、ギムさん!!
オイラは親指を立てて「Good Job!」の意思表示。
ギムさんは「どんなもんだい!」と得意顔です。
その後、
2人で舞台に移動し、
「韓国版ではこうするつもりです」
「十夢では机やプレゼン台はここに置くつもりです。」
など演出に関するそれぞれの考えを話しました。
不思議なのがねー。
通訳いないし、携帯の翻訳サイト使ってなくても何か分かるんですよね。
互いが互いの母国語しかしゃべっていないけど。
勿論、身振り手振りでの表現によるところも大きいとは思いますが。
分かるんですよね。
オイラはギムさんの言っていることを理解しようと努力しますし、
ギムさんもオイラの言っていることを理解しようと努力してくれます。
そう、
面白いのは、
「理解しようと努力してくれている」ことが、「分かる」ということです。
しっかし、
芝居の話をしていたら時間がたつの早い早い。
あっという間に3時間が経過。
気付くと食事をしようと話していた6時を1時間もオーバー。
2人で苦笑いしながら劇場を後に。
PM7:00
夕食。
ギムさんの案内で劇場から歩くこと
2分!!
近い。
近いぜギムさん。
ある焼肉店へ入る。
おぉ!?
焼肉?
本場の焼肉が食えるの!?
マジで!?
店員に言われるままに着席。
ギムさんが久しぶりに携帯に何かを打ち込み、オイラに見せる。
『何か特別に食べたいものはありますか?』
オイラは「キムチ!」と即答。
ここで遠慮するのは野暮ってもんです。
でも、考えてみたら韓国のキムチは焼肉のつけ合わせで勝手に出てくるんですよね。
ギムさんも「え?」って顔してました。
日本だったら、
「何食べたい?」って質問に
「お通し!!」
って答えるようなもんですからね。ヽ(  ̄д ̄;)ノ
でもギムさん、ニッコリと笑って店員さんにオイラ専用にキムチを用意するように伝えてくれました。
ありがたや、ありがたや。
でもね、
オイラ、
キムチ大好きなんだよ〜〜!!
辛いもの大好きなんだよ〜〜!!
甘いものは苦手ですが、辛いものには目がありません。
いや〜しかし、
韓国のキムチは美味い!
味に深みがあるっつーか、辛さがイヤミじゃないっつーか。
ビールが!
ビールが飲みたいぞ!!
キムチ一つでテンション上げていたら、
メインの肉、登場!
デカイし、
ぶ厚い。
ハサミで小さくするとはいえ、噛みきれるかなぁ・・・。
と少し心配しつつ肉を口へ。
はむはむ・・。
や、
やわらかい!
いや、
これはやわらかいなんてもんじゃない。
やはらかい!O(≧▽≦)O
そう!
やはらかいのだ!!
うめぇ!
超うめぇよ!
なんだよこの味付け!
正直、緊張でそんなに食欲なかったのに、
今でも食欲ある訳じゃないのに、
箸が止まらねぇよ!
ドンドン食えちゃうよ!
んで、
肉をバクバク食べていたら、
次に運ばれてきたのは「冷麺」。
これは有難い!
冷麺は冷たい中にピリ辛な味付けが加わりスルスル入る。
梨が入っていてフルーツの甘さがスッキリさせてくれます。
と、ギムさんが韓国風の食べ方を教えてくれました。
焼いた肉を冷麺の中に漬けろというのです。
「そんなことして大丈夫?
せっかくの肉が冷めちゃうだけじゃない?」
そう思いましたが、折角なので試すことに。
肉を取り冷麺のタレへ。
少し浸して口へ運ぶ。
う〜ん・・・。
申し訳ないがあまり美味しくない。
普通に食べた方が良い様な・・・。
すると、ギムさん、手を横に振ります。
どうやら方法が違うようです。
ギムさんが手本を見せてくれます。
焼肉を取り、
冷麺に漬け、
麺と一緒に食べました。
成る程、麺と一緒に食べるのがミソなのか。
で、試してみると驚いたことに中々イケる。
麺が少し甘めなので、肉の味が変わるんですよね。
流石。焼肉の食べ方を知り尽くしています。
あ、そうだ。
韓国では食器を持って食べるのは逆に行儀が悪いそうです。
韓国で、韓国の人と食事をする際は、相手に不快な思いをさせない為にも食器は置いて食べましょうね。
AM8:00
李さんと初顔合わせ。
ギムさんの奢りで食事を終え、大学路の中心へ移動。
町並み的には渋谷や池袋のような感じです。
前を歩いて案内するギムさんに向かって手を振る女性がいました。
おぉ!?
ギムさんもやるねぇ!
と、思っていたら女性がズンズンとオイラに近づいてきます。
そして満面の笑顔を向けて、
「初めまして!お会いしたかったです。李です。」
と言ったのです。
えぇ!?
り、李さんって、
女性だったの!!??
何でだか分かりませんが、勝手に男性だと思ってました。
考えてみればメールでのやり取りも凄く丁寧な文章で女性的ではありました。
こんなに可愛らしい素敵な女性だったとは・・・。
じょ、女性だった・・・って、
李さん、
ちょっと露出度が高すぎませんか?
目の前の可愛らしい女性の胸元はザックリ開いたTシャツで、下もデニムのミニスカート。
ミニな上にスリットが入っています。
正直、目のやり場に困る格好です。
目をずっと見つめるのも失礼ですし、
視線を落とせば下着が見えそうですし、
更に視線を落としたら単に覗き野郎です。
困った。
これは困った。
内心ではそんなことを考えつつ、キリッとした表情で李さんと握手。
そしてギムさんが歩き出しました。
李さんが通訳してくれます。
李さん「これから練習場所に移動します。3分くらいです。」
やった!!
練習が見れるんだ!!
これは楽しみ。
心なしか前を歩くギムさんの顔が少し緊張しているように見えました。
正直、演出としてその気持ちは良く分かります。
きっと本心では見せたくないでしょう。
まして台本を書いた本人が見るんですから、嫌に決まっています。
オイラだったら絶対に嫌です。
まだ演出しきれていない一番中途半端な状態を見せることになります。
「これが実力?」と舐められることにもなりかねません。
演出として一番傷つくことです。っていうか言い訳したい時期です。
それが分かっているからオイラからは「練習を見せてください」とは言わなかったんですけどね。
ギムさんはギムさんなりの筋を通してくれたのでしょうね。
練習場所に到着すると、熱気に包まれつつ役者たちが練習をしておりました。
壁が鏡で出来ている「いかにも」という部屋です。
いいなぁ・・・。こんな部屋で練習したいなぁ・・・。
ギムさんは一度練習を止め、役者たちにオイラを紹介してくれました。
オイラも韓国語で簡単に挨拶し、李さんがオイラを紹介してくれます。
「作家の方です。」という紹介をした時です。
役者たちが一斉に引きました。
Σ(|||▽||| )
あ、韓国でも「引く」って表現あるんだな。
これはお国柄なんかじゃなくて、本能なんだな。
本番5日前に作者が見学に来るって・・・。
そりゃ誰でも引くわな。(笑)
拝見させてもらったのは「オープニングから1日目が終わるまで」と、「ラストからカーテンコールまで」の2シーン。
しっかし、ギムさんとオイラは考え方やセンスがすんげー似てる。
だよね、だよね!のオンパレード。
あっ!こっちの方向で演出したのか!のオンパレード。
楽しい、楽しい。楽しいぞ〜〜!!
韓国語分かんなくても伝わります。
それは、「書いたのお前なんだから当たり前だろ」ということではありません。
役者の思いが伝わってくるのです。
思いは言葉を超えるのです。越えるのです。
ジョーカンパニーさんの芝居はまさしく思いを伝える演技でした。
で、
そういう思いが伝わると、
逆に焦りだすのはオイラの方です。
こ、このままじゃ負ける。( ̄□ ̄;
演劇に「勝ち負け」は無いと考える方もいらっしゃると思いますが、オイラは有ると思っています。
方向性が同じ劇団なら尚更。
っていうか、シーンが成立して無いなら当たり前のように「負け」ですよね。
ジョーカンパニーさんの練習を見ていて、早く十夢の練習がしたくてウズウズしてしまいました。
PM10:30
ホテル到着。
借りていた練習場所を出なくてはならない時間になり、強制的に退室。
役者たちも午前中からずっと練習のしっぱなしで相当疲れているようです。
ジョーカンパニーさん達と別れ、李さんがホテル近くまで送ってくれることになりました。
女性にホテルまで送ってもらう・・・。
李さんの露出具合・・・。
もしかして、オイラに会う為にこの服を選んだとしたら?
ど、どうしよう。
「部屋を見てみたい・・・。」なんて言われたら!!
頭ではそんなことを考えつつ、李さんの日本語の上手さを褒めます。
李さんは日本に留学していた経験があるそうで、言葉はその時に学んだそうです。
それにしては難しい言葉まで知っていますからね。
短い留学の期間に相当勉強したのだと思います。
とりとめもない話をしながら歩くこと約20分。
無事ホテルまで到着しました。
オイラはドキドキしながら李さんと向かい合います。
そして、
李さんは可愛い笑顔を向けて、
李さん「じゃお会いできて良かったです!芝居、見に行きますね!」
と言って手を振りつつバス乗り場へ小走りに去っていきました。
あ、あっさりしてるのね・・・。Σ(゚口゚;
オイラはトボトボとホテルに入り、ルームキーを受け取り、部屋のベットにゴロン。
う〜む。
なかなかに濃い一日だった・・・。
明日はいよいよ雑誌・新聞のインタビューです。
上手く答えられるでしょうか?
不安だ・・・。