船橋の顔 No.07
下総染小紋 鈴木染色工房 鈴木保雄さん
My Funaでは長きにわたって船橋を中心にご活躍されている、船橋の『顔』とも言える方々にスポットを当て、毎号ご紹介。写真とインタビューを通して、働く人々の素顔に迫ります。
第七回目は千葉県指定伝統的工芸品・下総染小紋の制作者である、鈴木保雄さんを取り上げます。
下総染小紋 鈴木染色工房 二代目 職人歴 43年 鈴木保雄さん(61) |
◆江戸時代から続く伝統的な手法を現在に伝える 父が元々近くの工場で働く染物職人で、小さい頃から遊びがてらよく手伝いをしていました。高校を出て一旦は就職したのですが、父から「お前がやるなら工房を構える」と言われ、それからはずっと職人です。昔の職人に近づきたいという思いで、紋様に関しては随分細かいものまで挑戦して来ましたし、江戸時代からのやり方を現在でも崩さずにやっているというのがこだわりですかね。
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◆船橋における産業の一つとして 「うちは帯揚げなんかの和装小物をずっとやってきたんですけどね、最近は着物の需要も減っちゃって。前は各町内に普段着として着物を着るような奥さんが一人ぐらいはいたんだけど。」 JR船橋駅からほど近く、総武線沿いに自宅兼工房を構える鈴木さんは、染物職人であった父・冨雄さんの独立を機に職人の道へ。以来、40年以上に亘り一貫して伝統的な手法による染小紋を作り続けている。その技術が評価され、昭和60年(1985)には「千葉県伝統的工芸品」として指定を受けることに。 |
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「最初は『江戸小紋』でやっていました。ここでやっているから『下総染』というだけでね、技術・技法的に他と比べて特色があるというわけではないんですよ。このあたりは東京に近いという事で、戦前ぐらいまでは結構染物の工場があったと聞いています。そういった意味では伝統的な産業と言えるんじゃないでしょうか。私も小さい頃、父が勤める工場の手伝いに遊びがてら行ったりしていました。夜に『ちょっと様子見てこい』なんて言われて海老川に行かされたりして。今みたいに街灯もなかったし、あれは怖かったなあ。今でもたまに思い出しますよ。昔は海老川で洗ってましたからね。今みたいに堤防が出来る前までは。」 |
◆「画際」が違う手彫りの型 長きに亘って船橋で染物を作り続ける鈴木さんだが、その道のりは決して平坦なものではなかった。大病を患うなど、仕事に対する意欲が低下していた時期もあったという。 「少し前に大きな病気をしちゃいまして。回復後もどこか自分の中でバランスが崩れたような、以前とは違うという感覚がしばらくあって元気がなかったんですが、最近になって少し戻ってきたというか。年を取って見えてくるものもあるな、と。」 |
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「最初のイメージ通りに出来た時ですかね。天候などに左右されやすいという事もあって、なかなか難しいんですが、それもまた面白みの一つです。」 「シルクスクリーンでやったら印刷じゃん、という思いはあります。手彫りの型と餅粉、米ぬかからできた糊を使って、江戸時代から職人がやってきたことを一切崩さないでやっているというのがこだわりですね。そうして作ったものは画際が柔らかく、味わい深いものがある。数はできませんが、白い布から完成までの全行程を、これからも手作業で続けていきたいですね。」(取材・写真/篠原章公) |
「小紋糊を作っていた工場が廃業しちゃってね。この糊も自分で作っているんですよ。」 作業工程の中で「気を抜ける所はない」という鈴木さん。取材中、糊から香るお米のにおいが印象的だった |
こののち、染色の段階へと進む。工程は全て手作業によるもの |
下総染小紋 鈴木染色工房 二代目 ◆鈴木染色工房 |
※この記事に記載の情報は取材日時点での情報となります。
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