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小さい恋人たち 第4話

このエントリーを含むはてなブックマーク この記事をクリップ! 2010年7月 1日

 

赤紫、ピンク、赤のゼラニウムの花びらが日を浴びてかがやいている。

ユキは公園のベンチにランドセルをおいた。 

「学校、たのしい?」 

花山のおばさんの声だけがひびいている。 

「はやくプールに入りたいなあ」 

 一年生だな。おじいちゃんもなんか言ってよ。

にこにこ笑ってばかりいないで。

家族みんなが応援しているんだから。 

 

 

今度は、二年生ぐらいの女の子が二人。おじいちゃんの前で止まった。 

「おかえり」 

おじいちゃん、もっと声出るでしょう。 

「ねえ、おじさん。クイズだよ」 

丸顔の女の子。ちょっとすましたところがあやしい。 

「テブクロの反対なあに」 

おじいちゃんは首をかしげている。 

しばらくしてから、ゆっくりと口をひらいた。

あ、だめ。ユキは声が出そうになる。 

「ロ、ク、ブ、テ?」 

「おじさん、手を出して」 

今度は目の大きな女の子。ぴちっといい音がした。

二人の女の子が、かわるがわるおじいちゃんの手のひらを六回たたいた。 

「なんでえ?」 

と、花山さん。おじいちゃんはニコニコしたまま。 

「だって、ロクブテだから、六回ぶたれるの」 

「あ、そうかあ」 

おじいちゃんはうれしそうに笑った。大きな声で笑った。

ユキは、久しぶりにおじいちゃんの大きな声を聞いた。 

「だめじゃん、おじいちゃん。ひっかかっちゃあ」 

 ユキは思わず大声を出してしまった。 

「なんだ、いたのか。ユキ」 

 花山さんも笑っている。 

 

 

 夕食後、ユキがお兄ちゃんとテレビを見ていると、

おじいちゃんがリビングに入ってきた。 

二人の間にすわると、おじいちゃんはニヤッと笑った。 

「リュウ。テ、ブ、ク、ロの反対はなんだ?」 

 お兄ちゃんは目をぱちくり。    

 

 

 

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【筆者プロフィール】
北澤朔(きたざとはじめ)
山形県鶴岡市出身、船橋市在住
1992年『自転車』で第四回船橋市文学賞受賞 
著書/『見つめる窓辺』(文芸社)
『黄色い』(日本文学館)

 

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