2013年07月01日 配信

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中学時代の友人と飲む酒は、三十年の時を越えて再会した三年前からこれで何度目になるだろう。

今年、彼の息子さんが私の 勤務している病院で手術をした。

野球が好 きで、シニアでも活躍していたというのに、

肩の故障で塁間もボールが届かないどころか、トスバッティングのトスさえ出来なかっ たという。

幾つもの病院にかかり、沢山の 時間をリハビリに費やしたが、良くなった かと思うとすぐにまたダメになった。

野球 が思いっきりしたい。

高二、ラストチャン スの一年のために決断した手術だった。

手術は成功した。

先日はベンチ入り最後の背 番号「 20 」を付け、代打で出塁してホームまで戻ってきたのだという。

「見に行ったわけ じゃないから、どんな当たりだったのかも実は わからないんだ。

本人も言わないしな。

知り合いが連絡してくれてさ。

そういえばその背番号、おばあちゃんに縫いつけてもらったんだ」と、

そんな話までしてくれた彼が、話の終わりにこ う言った。

「もし、龍一との再会がなかったらこの手術はしなかったかもしれない」そして「あ りがとう」と。

そう言われても私が何かしたわ けではない。

感謝の言葉を受け止めるものを私は持っていなかった。

だけど。

それが縁というやつなのかも知れないなと感じた。

西船橋駅前の喧しい酒場の安酒を手に煙った天井を仰いだ私は、そう呟いた。(了)

◇大内 龍一
昭和39年、茨城県生まれ。

船橋市内病院勤務の傍ら国際協力NGOの顧問を務める。
障害のある娘についてのエッセイや論文の発表を通してハード面だけでなく心のバリアフリー広げる活動を行っている。平成22年「未来を築く子育てプロジェクト」エッセイコンクルール最優秀賞・厚生労働大臣賞受賞

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