2013年01月01日 配信
「今年はやけに注文が多いな」と言いつつもあなたは嬉しそうな顔をして白く長いひげを撫でる。どんな難しい注文があってもなんとか叶えてあげようとあなたは寝る暇も惜しんで世界中を駆け巡っていましたね。
そんなあなたを見るのも今年で終わり。
「今度のやつは若くてスマートだから、そりを引っぱるあいつらもきっと楽だろうよ。でもな、こうなってからが一人前なんだ」とあなたは丸く膨らんだお腹をぽん、と叩いた。
そういえばあなたも若いころは今より痩せていて、どんな狭い煙突でも入って行けたのに最近はあなたの重さで屋根が落ちないか心配でした。
ずっと伸ばしてきた白い自慢のひげはそのままでいいじゃないと言った私に、あなたはけじめだからとよく切れるはさみとかみそりを買って来させた。シェービングクリームは1本で足りるかしら?ひげのないあなたを見るのは楽しみです。
もうたくさんの手紙や難しい注文に焦ることもない、家を壊してしまわないか心配する必要もない。
来年のクリスマスにはケーキを食べましょう。チキンもこんがりと焼いてツリーを飾りましょう。そう言うと「来年はハワイに行こう」だって。
本当はあなたが寒がりだってこと、今思い出しました。
今まで本当にお疲れ様でした。そして、メリークリスマス。
◇深澤 竜平
昭和52年、山梨県生まれ。
2006年、船橋市に転居し翌年から小説創作を開始する。
2011年 「応援席のピンチヒッター」にて「第23回船橋文学賞」文学賞を受賞。
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