船橋の農業 最前線 ~典型的な都市型農業としての行く末~
◆ マンションと鉄道の隙間に畑がある南部の市街化区域(石井農園/本郷町)
船橋市の農業はいわゆる「都市型農業」といわれる形態。
「都市型農業」とは、大消費地に近い農業地帯や都市部の生産緑地などを表す言葉だが、東京まで約20kmの至近にあり、船橋市自体が人口61万人を超える大消費地でもある。
そのような中にあって、生産農地は都市の景観や環境の維持、ゆとりやうるおいの提供などの貴重な役割という別の側面も担っている。
◆ ビニールハウスを活用した小松菜畑 (平野農園/山野町) |
◆ 北部に広がる大規模な農業地域 (豊富町) |
北部で大規模な農用地南部の市街化区域で生産緑地
日本の食料自給率はカロリーベースで40%を下回っており(平成22年度:農林水産省)、農家の平均年齢は上昇し続けており、後継者不足も叫ばれているが船橋の農家はどのような現状なのだろうか。
船橋市の市域は65%以上が市街化区域に指定されている。北部は、農業振興地域としてその多くが大規模な農用地となっている。
市街化区域内には生産緑地(※1)に指定された農地があり、ここで野菜やナシ、酪農、花卉などを中心とした農業が営まれている。
船橋市の県内における農業産出額は12位(95億7000万円※平成17年)を誇っている。
平成17年における農家総数は1174戸。うち、自給的農家(※2)215戸を除く販売農家(※3)数は959戸、総農家数に占める割合は81.7%で東葛地域( 73.8% )や千葉県(77.7%)のそれを上回る。
また、販売農家に占める主業農家(※4)の割合は59.5%で東葛地域(40.6%)や千葉県(27.8%)と比べて65歳未満の働き手が農業に参加している様子がうかがえる。
船橋の農業産出物
船橋市の農業産出額のおよそ70%が野菜、20%がナシ。
その他がシクラメンなどの花卉が約1%程度で、酪農・養鶏などの畜産は約6%となっている(千葉農林水産統計より)。
指定野菜を含む船橋市の主要農産物内訳は、下記別表の通り。
◆ 指定野菜とは!?
消費量が多く国民生活にとって重要な野菜として野菜生産出荷安定法で定められた野菜で生産者補給金などの対象となるもの。
ダイコン、ニンジン、ハクサイ、キャベツ、ホウレンソウ、ネギ、レタス、キュウリ、ナス、トマト、ピーマン、ジャガイモ、サトイモ、タマネギの14種類
◆ ※1)生産緑地
大都市圏など都市化の進んだ地域において地盤保持や保水などの機能、都市環境の保全を目的として農地や緑地として残すことを自治体が指定した土地
◆ ※2)自給的農家(215戸)
経営耕地面積が30a未満かつ農産
物販売金額が50万円以下の農家
◆ ※3)販売農家(959戸)
経営耕地面積が30a以上又は、農産物販売金額が50万円以上の農家
◆ ※4)主業農家(571戸)
農業所得が主(農家所得の50%以上が農業所得)で、65歳未満の農業従事60日以上のものがいる農家
( )内の数字は、市内の農業従事者戸数
船橋市の主要農産物生産及び産出額
◆ 特別な栽培の方法で希少なイタリア野菜を栽培(石井農園/本郷町) |
◆ 小松菜の品質安定でブランド化を図る西船橋葉物共販組合出荷用の共通結束テープ |
都市型農業においては、土地集約率を上げ、土地辺りの生産性を高める事が求められる。
その為、独創的な手法によって経営効率の改善を図っている例が自然とみられるようになる。
市内農家では、ブランド化によって付加価値を高めるたり、加工品を開発したり、生産効率を大幅に向上させる手法を開発したりと様々な特色が見られる。
こだわりの飼料で安全飼育
メーカーの配合飼料に頼らずとうもろこしや大豆、昆布、牧草や酵素などを独自で配合、高品質な飼料で育てた卵が自慢の生産農家、奈良養鶏園( 船橋市馬込町1161・奈良五十八代表・TEL 047-438-5489)。
抗生物質や人工着色料を一切使用せずに育てる鶏が産む同園の卵は、アレルギー体質やアトピーに悩まされる家庭で20年来に渡って愛用されているというから驚きだ。
話題の「アロウカナ」鶏の卵は「高血圧を抑えたり、脳を活性化させる働きが強いといわれています」(奈良さん)。
また、同園の卵には全て抗酸化作用のある『アスタキサンチン』が多く含まれている。
フルーツに特化した観光農園
ブルーベリーや梨といったフルーツに特化した観光農園はグリーンプール岩佐農園( 船橋市坪井町126-1・岩佐千登世さん・TEL 047-457-9327)。
1983年から植付を始めたブルーベリーは当初市場出荷がメーンだったという。
植え付けから数年、入園料1300円で食べ放題の「都市に一番近い観光農園」として方向転換。
「自分でとって自分で作れる」ブルーベリージャムなどが評判になり、夏場のシーズンには100件以上の来園者が訪れるという。
また、オリジナルで作成しているジャムは各地の百貨店でも好評を博しており多くのファンが毎年楽しみにしている。
パウダー化と朝市で地元認知UP
開発著しい西船橋周辺の小松菜農家15軒が加盟する西船橋葉物共販組合(JAちば東葛内・加藤義久組合長・TEL 047-438-9571)では小松菜の共同規格を作り組合全員で共同の結束テープを使用、安定供給できる仕組みを作り高品質と安全を約束しブランド化。
市内の大型直売所にも専用コーナーが設けられている他、学校給食でも毎日のように使われる人気の食材に。
市内各小学校で行われている食育授業は、小松菜農家二代目の「チームうぐいす」が主体となって教室に赴く。
漁業者と共同で行う「漁港の朝市」や第4土曜日に行う「やまとの朝市」など朝市も積極的に参加している。
搾りたての牛乳でソフトクリーム
市内でも最大級の農地を持つ佐久間牧場(三咲町433・佐久間豊代表・TEL 047-448-7806)では、併設の「佐久間あいすくりーむ工房」で食す事のできる搾りたての牛乳をつかった濃厚なソフトクリームが人気だ。
農園で採れた船橋産の「丹波の黒豆」や「金柑」「小松菜」「落花生」など地産フレーバーに加え、チョコレートやキャラメルといったメジャーなものまで常時30種類以上が用意されておりその中から日替わりで12種類のフレーバーが店頭に並ぶ。
春には「菜の花」秋には「コスモス」が満開になり道行く人の目を楽しませるよう工夫されている。
多品種・小ロットで高付加価値
イタリア野菜など珍しい野菜を多品種・小ロットで生産、直売所で販売している石井農園( 本郷町516-1 石井秀樹代表・TEl 047-302-5575)は、スーパーなどでは手に入らない珍しい食材を求めて料理好きな主婦や料理教室を主宰している先生などに好評。
また、西船橋駅に最も至近なイチゴ狩りスポットとしても重宝されている。
代表の秀樹さんが元Fリーガーの為、スポーツ選手が多く訪れるというのも話題の一つ。
4月からは水曜日の夜に「ナイトストロベリーツアー」も開催される。
土地価格が高騰している西船橋エリアだからこそ、付加価値の高い生産物で他との差別化を図っているのだ。
大型直売所 ふなっこ畑 ちば東葛農業協同組合(JAちば東葛)が直営する大型直売所。 住所:船橋市行田3-7-1 |
産直のお店 味菜畑 農業組合法人が、健康で安全な美味しい野菜作りを目標に運営しています。 住所:船橋市豊富町1482-235 |
農産物直売 しんぱたけ 約80軒の契約農家が畑から直接朝どれ野菜を持ち寄ってくる市内最大レベルの直売所店内には多品種小ロットで栽培され、農家によって「楽しみながら」育てられた野菜が並ぶ。 住所:船橋市高根町2597-1 |
※この記事に記載の情報は取材日時点での情報となります。
変更になっている場合もございますので、おでかけの際には公式サイトで最新情報をご確認ください