2012年02月01日 配信

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今年も収穫はゼロだった。学校が校内へのチョコの持ち込みを禁止したのはいいけれどそのおかげで、“義理”も“友情”もばらまく女子はいなくなった。

それでも女子達は朝からざわつき、自分の力作をこっそりと見せ合っていた。

いつも同じ帰り道の友達は「今日、ちょっとワリィ」と突然向きを変えて横道に消えていった。彼の行く先には“本命”が待っているのだろう。

一ヶ月後には高校入試だっていうのに、どいつもこいつも浮足立って……

むなしさいっぱいの僕を家で待っていたのは、ピンクのハート模様の包装紙に包まれた箱。

母さんだな……

それは“義理”でも“友情”でもましてや“本命”でもない“母チョコ”。

なぐさめられているようで照れくさいのと、チョコひとつもらえない息子でごめん、という申し訳ない気持ちが入り混じる。

視線を感じ振り返ると満面の笑みを浮かべた母さんがいた。

「気に入った? かわいいラッピングでしょ?!」

「何、これ? いらないし」

「いいから、もらえるものはもらっておきなさい。母さんだって一応女だから」と母さんは笑った。

そう言ったって母チョコは収穫のカウントには入らないんだから。

「お返しはそうだな……志望校合格でいいからね」

でいいから、ってなんだよ……母さん。

 

【筆者プロフィール】

深澤 竜平
昭和52年、山梨県生まれ。
2006年、船橋市に転居し翌年から小説創作を開始する。
2011年 「応援席のピンチヒッター」にて
「第23回船橋文学賞」文学賞を受賞

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