今は西暦3000年6月火星時間午前5時いつもながらの静かなクリュセ平原の朝が明けようとしています。太陽の昇る東の空に青く輝く地球がことさら美しくきらめいて見えます。緑のジュータンを敷きつめたようななだらかなルナ高原のむこうに朝霧に煙った森が見えます。そして、はるか遠くにタルシス三山の山並みとひときわ大きなオリンポス山(標高2万7千m、富士山の約7倍)がその山頂に雪をたたえて輝いて見えます。
前回は火星の地球化計画のシナリオをお話しました。今回は西暦3000年までに火星を地球に変えるという壮大な計画の詳細をお話します。まず、火星を暖めることから始めます。暖める方法はいくつか考えられています。典型的な例を二つ紹介します。一つは巨大な鏡で太陽光を反射させて暖める。他には温暖化を進めるためにフッ素ガスのようなガスを大気中にまきちらすなど色々提案されていますがいずれも一長一短があります。
私は微生物を使って暖める方法を考えました。嫌気性(酸素を全く必要としない生物)で無害の藻類や光合成細菌類を地表面にふりまき繁殖させることによって太陽熱を効率よく吸収して大気温度が徐々に上昇します。幸いにも極冠や土壌中には大量の二酸化炭素が固定されているので、これを大気中に放出させることにより温室効果(地球の温暖化)で容易に大気温度と大気圧を上昇させることができます。地球の大気圧にまで上昇するのに約200年かかるでしょう。温度が上昇すれば当然地下に大量に存在する氷が溶けて火星表面は水に覆われます。そして、雨が降り、川が流れて湖や海ができます。こうして、約500年で植物が繁殖して酸素や窒素が供給され、火星は地球と同じように温暖な空気と水を持った惑星に改造されます。そして、第二の地球が誕生するのです。
次回は今後の宇宙開発についてお話します。
日本宇宙少年団千葉コスモス分団では常時団員を募集しています。希望者はホームページを参照してください。
http://www005.upp.so-net.ne.jp/Chiba-Cosmos/
【筆者プロフィール】
小池惇平(こいけ・じゅんぺい)
昭和18年長野県生まれ。元国立大学法人東京工業大学教官。
現在青山学院大学非常勤講師。
日本宇宙少年団千葉コスモス分団団長。専門は宇宙生命科学。
理学博士。船橋市宮本在住。
※この記事に記載の情報は取材日時点での情報となります。
変更になっている場合もございますので、おでかけの際には公式サイトで最新情報をご確認ください