2010年06月01日 配信

 おじいちゃんがサザンカ公園にいたって本当かな。おにいちゃんは、けっこういいかげんなことを言うから。

 

 
 公園が近づいてくる。ユキの胸はドキドキしてきた。公園のうら手にまわる。

 サザンカの葉が緑をこくしていた。植え込みからそっと公園の中をのぞきこむ。サザンカ公園はそんなに広くない。すべり台に幼稚園生ぐらいの男の子がのぼっている。とちゅうまで上った、妹らしい女の子が泣きべそをかいている。そばにいるお母さんが、だいじょうぶよと声をかけていた。悪いことをしているわけじゃあないのに、ユキのドキドキはおさまらない。表通りの入口に黄緑色のぼうしが二つ見えかくれしている。
 
 
「おかえり。道草くっていたでしょう」
  花山さんのおばさんだ。早口で声が大きいからすぐにわかる。
「おばちゃん、どうしてここにいるの?」
「このおじさん、スクールガードの一年生。おじさん、なれてないから、とうぶんおばさんといっしょ。よろしくね」
 
 
 あ、そうか。それでこのごろ空き地前にいないのか。後から、もにゃもにゃした声がした。よろしくとか言ったみたいだが、元気がない。それから何人もの子どもたちが通った。聞こえてくるのは花山のおばさんの声だけ。おじいちゃん、もっと大きな声出してよ。家にいるときは、大声で歌ったり、笑ったりしていたのに。心配事が一つへったのはうれしかったが、かくれているユキはやきもきした。

 
「なんだ、ユキ。なにしているんだ?」
 
 
 背中に、ばかでかい声。ふり返ると同級生の男の子。一番見られたくないやつ。もうおそい。黄緑色のぼうしが二つ、回れ右をした。

  

 

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【筆者プロフィール】
北澤朔(きたざわはじめ)
山形県鶴岡市出身、船橋市在住
1992年『自転車』で第四回船橋市文学賞受賞
著書/『見つめる窓辺』(文芸社)
     『黄色い』(日本文学館)

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